2004.6.11started   Mar. 23, 2019 revised

 受験生の皆さんの自然地理学の学習や高校地理の先生方の授業教材として役立てていただくために,今後,折りに触れ,掲載してゆく予定です。

世界の大河川: 2019年度3月4日実施 (Wordファイル) Mar. 30, 2019掲載
入試講評を次に示します。

〔T〕受験生が知る世界大河川の自然に関する問題である。問(1)〜(5)に表れているajに対応する10河川名を次の表に示す。

 

問(1)

 

問(2)

 

問(3)

 

問(4)

 

問(5)

a

アマゾン川

c

ナイル川

e

ガンジス川

g

長 江

i

ライン川

b

コンゴ川

d

ミシシッピ川

f

インダス川

h

黄 河

j

ポー川

 この設問は地形の基本的知識を問う問題であり,4設問中,44%と最も平均得点率が低かった。〔A〕では成績上位者と正答率が必ずしも一致しなかったのは,問(4)である。長江の特色の組み合わせは (ウ) 正答 選択率60%余 であるが,黄河の特色である (エ) 誤答 選択率 26% を成績上位者が選択している。問(4)の「流域面積も長さもより大きな河川」gを黄河とした判断ミスに起因している。
 〔B〕で最も正答率が5%を切るほど低かったのは黄河hに近接する都市であった。正答は(ツ) ルオヤン(北魏や隋などの首都であった洛陽)である。3割前後と選択率が高いのは,高い方から示すと,(セ) テンチン,(ウ) シャンハイ,(ソ) コワンチョウであった。(ウ) シャンハイが選ばれたのは,前述のようにhを長江と誤解したことが主な原因となっている。
 正答率が2割を切ったのはコンゴ川bに近接する都市であった。正答は (テ) キンシャサであるが,他の選択率はこれより低くなっている。 では改めて〔A〕問(1)を見ると正答の(エ)を選んだ率は44%ほどであり,コンゴ民主共和国の首都であるキンシャサがコンゴ川沿いに位置することを知らなかったということのようだ。
 〔A〕の問(2)〜(4)の個々について外部の検証スタッフからの問い合わせがあった。誤解に類するものであったが,受験生にも参考となるのでその一部の問い合わせと当方の回答を以下,示したい。
 問(2): (コメント)ミシシッピ川にミズーリ川を含めるかどうかで回答が変わる。(回答)流域面積を問題にする場合,支流の名称は意味を成しません。淀川の流域を考える場合,木津川を含むかどうかは問題にはなりません。ミシシッピ川の流域面積と言う場合,ミズーリ川などを当然含みます。正答率:56%。
 問(3): (コメント1)融氷水に融雪水を含むと考えた場合,問題が無いが,インダス川は春の雪解け水によって安定した流量を保つため,解答に疑義が生じる。(回答)アジアの主要大河川では,「流量の大半を融氷水」が占めるというのは,地球温暖化論議でよく出てきたことです。ただ,Published online 10 June 2010 | Nature |のGlobal warming's impact on Asia's rivers overblown: Freshwater flow dominated by monsoon rains rather than glacier run-off.では,アジアの主要5河川のうちで,特に融氷水が流量に貢献しているのは,インダス川に限られるという記述があり,Furthermore, the study found that in the Indus and Ganges basins, glacial ice contributes only about 40% of the total meltwater, with the rest coming from seasonal snows. In the other three rivers its contribution is even lower.という記述もありますので,the Indus and Ganges basinsのうち,インダス川だけに限定すると,「流量の大半を融氷水が占める」というのは誤りではないと思います。
 問(3): (コメント2)インダス川の三角州が世界最大級と言えるかどうか。(回答)J.T.Wells and J.M.Coleman, 1985. Deltaic morphology and sedimentology with special reference to the Indus River delta. Technical Report No. 424, Coastal Studies Institute, Louisiana State University. で,例えば,p. 87にはインダス川について,The deltaic plain alone, that area from the shoreline to the alluvial valley, covers 29,500km2 in the shape of a broad fan (Fig. 1).などとあります。更に,p. 88 Fig.3には,インダス川がニジェール川,ダニューブ川などより大きく,ミシシッピ川やボルガ川,と同列に並んでいます。正答率:57%。
 問(4): 黄河の特色に該当すると思われる,選択肢のD黄海に注ぐ,となっているが山川出版社『地理用語集』「ホワンホー(黄河)」では,「ボーハイ(渤海)にそそぐ」とあった。(回答)長江が東シナ海に注ぎますので,縁海の規模を同オーダーで,黄河を黄海としました。Webster's Geographical Dictionary 3rd Ed., p. 1327に,North inlets are Bo hai and Korean Bay. という記述があります。正答率:56%。
 なお,受験生が『地理用語集』を受験勉強の資料にするのは致し方ないが事実などのチェックには誤りが多く,指導する側の資料としては適切で無い。
 正答は次のとおりである。

〔A〕問1 エ 問2 イ 問3 ア 問4 ウ 問5 イ 
〔B〕a キ b  c イ d タ e コ f オ g ウ h ツ i エ j チ 

 

ヨーロッパの世界自然遺産:2月8日実施 (Wordファイル) Mar. 30, 2019掲載
入試講評を次に示します。

  〔T〕ヨーロッパの世界自然遺産に関する問題である。出題者は世界遺産そのものに注目している者ではないが,破壊が比較的進まずヨーロッパだけでなく広く世界の人々に愛されている自然地域を知ることには意味があると思っている。問は3種あって,解答欄は図a〜eに揃えている。下に示した正答は問題の構造がわかるように,入試の際の解答欄のレイアウトとは異なった整理をして表示している。
 教科書に特に示されてはいないので,いわば地理の常識を知るかどうかというような設問であり,平均得点率は62%であった。
 正答率1割余だったのは,問(B)図bであった。上位得点者ほど正答率は高い。正解はスイスのインターラーケンである。高い選択率を示す選択肢は無かった。
 正答率が4割を切ったのは,問(B)図cと問(B)図dである。問(B)図cはアのソグネ(フィヨルド)で,問(B)図dはエトナ(火山)になる。いずれも常識の範囲ではある。問(C)eは3割を切るが上位者ほど正答率が高くなっている。正解はイのドイツであるが,選択率が5割弱と最も高かったのはコのオランダである。

 

図a

図b

図c

図d

図e

問(A)

問(B)

問(C)

 

自然災害: 2019年2月3日実施 (Wordファイル) Mar. 30, 2019掲載
 常識的問題である。多少,ニュースなどを日頃見ていることを前提にしている。

 (A) イ (B) ウ (C) ア (D) ア (E) イ
 (F) ア  (G) ウ (H) ウ (I)  ア (J) ア

Koeppenの気候区分図の配列:2019年2月T日実施 (Wordファイル) Mar. 30, 2019掲載
 a キ b カ c エ d オ e イ f ウ g ク h コ i ア j ケ

河川争奪地形:2019年2月7日実施 (Wordファイル) Mar. 30, 2019掲載
入試講評を次に示します。

  〔T〕河川争奪を例とする知識よりも推理力を評価する問題である。4設問中,最も高い正答率を示す。地形生成の推理力を試す内容としては高度な部分もあるが,高い正答率を示している。特に正答率が低かった2問について解説する。
 問(A)の正解は(ウ)である。最も高い回答率を示したのは(イ)である。総合点の高い受験生は(ウ)の正解を得ている。設問の最初の問であり,高校生の知識で最初から正解を得ることは難しい。ただ,問(F)の正答率が5割を越えており,これから問(A)に戻って正解を得ることは可能であった。
 問(E)の正解は(ア)である。「下図?の周辺には当時のB池岸線に堆積地形を認める」の下線Bの地形は,三角州である。池の岸,湖の岸,海の岸に生成されるのが三角州である。河川が広い水域に到達して運ばれてきた砂泥が堆積して海岸や湖岸に三角州が形成される。図β下図の?〜?には谷底平野が見られる。谷底平野を流れてきた河川がかつての益田池の岸辺に到達して三角州を作ったのである。
 正答は次のとおりである。

(A) ウ  (B) ア   (C) ア   (D) ウ   (E) ア  (F) ア  (G) ア  (H) ウ  (I ) イ  (J) イ

 

大気大循環と風系: 2018年実施 (jpeg)  2018.3.5掲載
   教科書の簡略化傾向もあって,風系の誤解が学校教育で進んでいるように思っています。大気大循環で取り扱われる貿易風や偏西風などと季節風がまるで全く異なるもののような記述になっています。さらに,帝国書院の『新詳高等地図』では,昨年度まで使われていたもの(気候(二)p.111など)と,今年度のもの間でも,断り無く,熱帯収束帯の位置などが変更されていて, 変更理由が全く示されていません。日本の地図帳はかなり, Diercke Weltatlas - Aktuelle Ausgabe に依存しており, 科学的知識のないまま, 流用されているように思います。過った知識が入った受験生にも,国語的に理解できれば解けるようにしています。

世界の降水分布: 2009年実施 (MSword + Figure-image) 2017.4.23掲載

太平洋の海流:2004年実施 2004.7.14掲載

 

太平洋地域の火山の分布:2002年実施 2004.6.11掲載 6.26修正
解答と解説 2004.6.26掲載

阿蘇カルデラの火山地形と地震災害:2018年実施(pdf)  2018.3.5掲載
  2016年には熊本地方で 4月14日と16日の2回に亘って震度7(益城町)に及ぶ熊本地震が発生しました。受験生の自然災害に関わる関心度も含めて,設問を作りました。教科書に出ている火山地形の知識はつぎはぎ的で,実際の地形と関連づけて学ぶ形がありません。そういった欠陥を補う意味もありましたし,他の関連地形とも連動させました。

大和川水系の平野地形:2018年実施(pdf)  2018.3.5掲載
 教科書では,谷底平野,扇状地,三角州の説明があるが,具体的な配列などは示されていない。そこで,奈良県から大阪府にかけて流れる大和川水系の河川地形を使って具体的に例示した。筆者が作成したGoogle Earthによる鳥瞰図やGISなどの図面などを使用している。

海岸地形発達史モデル:2018年実施(pdf)  2018.3.5掲載
  海岸(線)には,沈降(沈水)海岸,隆起(離水)海岸,そして沈降にも隆起にも関わらない中性海岸の三種に分かれ,さらに,二種の海岸が関わる合成海岸も設定されている。このように分けても,実態を知るのは難しい。たとえば,地図帳には砂州地形のブロックダイアグラムが用意されているが,これは沈降海岸の一つのリアス海岸に描かれることが多いが,もちろん,沈降海岸に限定されるものではない。デーヴィス流の地形発達史の系譜のジョンソンの海岸区分は,そのブロックダイアグラムの秀逸さから理解できるように勘違いするが,実際の海岸の多くはそうはなっていない。過去,デーヴィス批判なるものもあったがそれはあたらない。これらのモデル自体は思考実験をする上で非常に有効であり, 批判者よりもデーヴィスモデルがより優れているからである。海岸平野と言っても,日本のものとUSA東海岸のものは別物である。そういったことを教師と生徒に理解して頂くためにこの問題を作成した。

地下資源USA:2018年実施(pdf)  2018.3.5掲載
  地下資源に関わる教科書の記述では,一つの鉱山地名に関わって,その地名付近だけに鉱床があるように勘違いする。入試問題もしかりである。実際はかなり広範な探鉱と採掘地があるにも関わらず, 採算が取れて生産量も多いポイントとその地名が教科書に現れている。そういうことを理解して頂くために,この問題を用意した。州名を問うのはそういう思いもある。

 

以 上