関西大学年代測定室のベンゼンー液体シンチレーション法による 放射性炭素年代測定法「: 放射性炭素年代の計算過程とその較正年代への変換[i]

木庭元晴・網干善教・米田文孝

書誌: 木庭元晴・網干善教・米田文孝,2003. 関西大学年代測定室のベンゼンー液体シンチレーション法による放射性炭素年代測定法IV - 放射性炭素年代の計算過程とその較正年代への変換 -. 関西大学考古学研究室開設五拾周年記念考古学論叢, p. 1303-1329.

Motoharu KOBA, Yoshinori ABOSHI, Fumitaka YONEDA, 2004. Processes of radiocarbon dating at the Department of History and Geography, Kansai University (Code name: KU): radiocarbon age determination and its calibration to calendar year.

日付は2003.12だが,発行は2004.3。完成原稿を提出したのが2001.1頃。
この報告は筆者が共同研究として実施してきた弟6報にあたるものである。

目次リンク------------------ 

1. 放射性炭素年代の計算過程  
 1.1 液体シンチレーション計測値の取得  
 1.2 液体シンチレーション計測値の評価 
 1.3 14C放射年代の決定過程    
   1.3.1 液体シンチレーション計測値の評価と年代計算基礎データ値の算出    
   1.3.2 放射性炭素年代値の算出

2. 放射性炭素年代から較正年代(暦年代)を求める方法  
 2.1 プログラムファイルのダウンロードと解凍  
 2.2 年代未知試料の14C年代や試料名などの入力  
 2.3 スプレッドシート(csv形式)から較正年代を求めるー全過程    
   @ Preliminary Setup    
   A Data handling    
   B Calculations    
   C Graphics    
   D Others  
 2.4 日常的なCALIBの操作過程    
   2.4.1 14C放射年代値などの入力    
   2.4.2 CALIBでの操作    
   2.4.3 入出力ファイルの整理 

文献(urlを含む) 

図・表リンク------------------ 

図1 正規性の検定のパラメータχ2値とP値の関係
  正規性の検定のパラメータχ2値とP値の関係 表1のデータに基づく。
図2 NIST,大理石,沼サンゴ礁産キクメイシ
  NIST,大理石,沼サンゴ礁産キクメイシ NIST、大理石、そして年代未知試料が、個々の測定サイクルで、類似した変動を示す。

図3 放射性炭素年代軸と較正年代軸の較正年代曲線
  放射性炭素年代軸と較正年代軸の較正年代曲線 Calibration Curveを使った場合。

図4 西暦年軸と確率軸の確率分布曲線
  西暦年軸と確率軸の確率分布曲線 Probability Distributionsを使った場合。

表1 液体シンチレーション計測 毎分カウント値からの正規性の検定による異常値削除
  液体シンチレーション計測 毎分カウント値からの正規性の検定による異常値削除 16データセットのうち,最大値,最小値(いずれもZ値を示す)の削除過程でのパラメータの変化を示す。
表2 年代未知試料と標準試料・バックグラウンド試料の正規性検定後の基礎データ
  年代未知試料と標準試料・バックグラウンド試料の正規性検定後の基礎データ 放射性炭素標準試料としてNIST,バックグラウンド試料として大理石,年代未知試料として沼サンゴ礁産キクメイシ化石試料を使用。本文で示した方法で解析した結果。

表3 放射性炭素年代の算出
  放射性炭素年代の算出 計算過程を示す。上から下に、バックグラウンドの計算、放射性炭素標準試料NISTの計算、年代未知試料の計算過程を示す。 

付録 放射性炭素年代測定依頼書および測定結果報告書(ダウンロード
年代測定を依頼される方に対する諸情報は木庭(2000)に示しているので参照願いたい。

本 文

  年代測定過程は、採取した年代試料の前処理、前処理済み試料の炭素からのベンゼン合成、そのベンゼンの液体シンチレーション計測、さらにその計測値を評価し年代を算出するという諸過程からなり、すでに五つの論文にまとめてきた(網干ほか、1999; 木庭、2000; 木庭ほか、2000a; 木庭ほか、2000b; Koba、2000)。ここでは関西大学年代測定室で実施している年代測定過程の最終フェーズである年代計算過程を示す。これは、放射性炭素年代とその較正年代の二つの計算過程に分けることができる。

 

1. 放射性炭素年代の計算過程

液体シンチレーション測定器であるカンタラスQuantulus 1220を使って試料中の放射性炭素濃度が得られれば,カンタラス付属のプログラムを使用して,年代値を求めることができる(Wallac Oy, 1992)。液体シンチレーション計測は、一試料当たり数十回、実施する。この計測値のうち幾つかの異常値を削除することがあるが,既定のプログラムではバグのために削除できない場合がある。さらに年代未知試料とバックグランド試料・標準試料それぞれの測定値は密接な関係があり,測定値を試料毎に評価するのはかならずしも適切ではない。カンタラス付属のプログラムでは計測値を統計学的に正しく評価できない。さらに、たとえ測定値の評価を実施しえたとしても、カンタラス付属のプログラムでは、一貫した放射性炭素年代を得ることができない。というのは、カンタラス付属のプログラムでは年代試料ごとにFM値を最大にする設定のもとで年代を算出する形になっているからである[ii]。それゆえここでは,カンタラスによる液体シンチレーション計測の後に,カンタラスから離れて独自に年代値を得る過程を示す。なお、計算には表計算ソフトのMicrosoft Excelェを使用している。 年代誤差や最大・最小可能年代値は,液体シンチレーションの計測時間が長いほど,好ましい方向に向かう[iii]。つまり,年代誤差は小さくなり,測定可能年代幅は大きくなる。測定誤差に測定時間を組み込む点で最も参考になるのは,Gupta and Polach(1985,pp. 100 - 122)である。なお,放射性炭素年代測定法に係わる一般的情報は木庭(2000)に示している。 次に示す計算例の試料は,1999年11月に計測した一連の試料のうちの,放射性炭素標準試料NIST,バックグラウンド試料としての大理石,沼サンゴ礁産キクメイシである。当時のベンゼン合成過程や液体シンチレーション試料作成法は,現在とは異なるのであるが,計算過程は同様である。 ちなみに,当時は有機質炭素試料や炭酸塩試料を酸素または窒素ガス雰囲気(キャリアー)で加熱分解または加水分解して二酸化炭素を発生させ,炭酸ストロンチウムで固定し,ストロンチウムカーバイド法でカーバイドを作成していた(網干ほか,1999)。現在では有機質炭素は溶融リチウムと直接反応させ,炭酸塩は真空回路で加水分解して二酸化炭素を溶融リチウムと反応させ,リチウムカーバイドを作成する方法を採用している(木庭ほか,2000a) 液体シンチレーション計測で使用するシンチレータは,当時はトルエンベースのPPO+POPOPを使用していた。原則として試料ベンゼン0.8mL,シンチレータ溶液2.0mLの混合液をテフロン銅バイアルェに充填していたが,現在は試料ベンゼン1.5mLを使用し,これにbutyl PBD粉末を22.5mg(つまり試料ベンゼン1mLに15mgの割合)加えている(木庭ほか,2000b)。 ベンゼン合成の過程や液体シンチレーション計測の条件は当時と現在では異なる。しかしながら,年代未知試料ベンゼンとバックグラウンド試料ベンゼン・標準試料ベンゼンはいずれも同一の方法で合成され,同じ時系列で液体シンチレーション計測されているために,当時と現在で年代値の系列に差は生じないと考えている。

1.1 液体シンチレーション計測値の取得

液体シンチレーション計測値の取得に関する詳細は,木庭ほか(2000b)に示している。カンタラスは液体シンチレーション計測過程で,その測定結果を順次REGISTRY.TXTというテキストファイルに記録してゆく。通常,計測中の宇宙線などの変化に対処するために,標準試料,バックグラウンド試料,そして複数の異なる年代未知試料,を順次1回ずつ液体シンチレーション計測して行く。ところが,測定結果の解析は当然,試料毎に行うから,試料毎にまとめる作業が必要となる。これは,1. カンタラスでSTATDATA.TXTというテキストファイルを作成する,ことで達成される。STATDATA.TXTを作成する際に,測定スペクトルを試料毎に加算する作業も実施され,その結果はQ□□□.000という名称のファイル[iv]に記録される。これらの計数データをカンタラスから離れて利用するために,2. DOS上でREGISTRY.TXT,STATDATA.TXT,そして全Q□□□.000ファイルをフロッピーやMOに記録する。REGISTRY.TXTは測定過程の記録であり,データに疑問が生じた場合にのみ,必要となる。 STATDATA.TXTのcpm値[v]は,測定時のdead timeが差し引かれて,小数点以下5桁まで示されている。液体シンチレーション計測値として,MCA 1 HALF1のChannels 50-650 (ウィンドウW1,既定値)を通常は採用するが,試料のスペクトルにクエンチングや,ラジウム・トリチウムなどの影響が認められる場合には,Channels 1-1024 (ウィンドウW2)を採用して,最も高いfM値が得られるように使用チャネル値を設定する場合がある。3. エクセルでSTATDATA.TXTを読み込み,W1またはW2の測定値を抽出する。 以上の三つのステップの詳細は,前述のように木庭ほか(2000b)に示している。

1.2 液体シンチレーション計測値の評価

放射性炭素は,次式のようにβ−崩壊して,窒素となる。この式の左辺のe-粒子を液体シンチレーション法によって

 14C - e- →14N                   式〔1〕

数えるのであるが,通常1試料1回当たり20分間(または50分間)計測を50回(または20回)繰り返して,計1000分計測を実施する。例えば20分計測の場合,50個の計測値は,正規分布すると考えられている。しかしながら,何らかの理由でこの分布を大きく乱す測定値が含まれる場合があり,排除した方がより信頼性の高い年代を得ることが可能となる。この章では,この排除の方法について述べる。 Gupta and Polach (1985)はカウント(計数)値そのものを分析の対象としているが,ここでは,毎分カウント値からカウント値を算出して,Gupta and Polachの式を使用する。というのは,STATDATA.TXTでは,不感時間を考慮した毎分カウント値などが試料単位に整理されていて利便性が高いのであるが,カウント値が表示されていない。カンタラスではカウント値はREGISTRY.TXTのみに示されている。STATDATA.TXTには,試料の実質計測総時間(や1試料当たりの平均計測時間)などが示されている。毎分カウント値からカウント値への変換は厳密な意味では誤差を伴うが,1試料の繰り返し計測時間の変動は微々たるもので,カウント値の確率分布を評価する上では問題とならない。なお,SQP(E)値もカウント値と同時に計測しているが,クエンチング曲線でSQP(E)値を使って求めた計数効率は,すべての試料について85〜86%の範囲を示す。 表1には,一つの測定系列に含まれる16試料の正規分布に関連するパラメータを示している。放射線の計測値は正規分布することが知られている。正規分布のパラメータとして,「正規性の検定」で得られるχ2値,P値(上側確率)や、別途、歪度・尖度が考えられる。表1の毎分計測値は50分計測を25回繰り返して得られたデータに基づいている。個々の試料について、25回の計測値をすべて使った場合、さらに最大値と最小値を削除(絶対値の大きい方を先ず単独に削除)した場合、のそれぞれで3セットのパラメータを算出している。χ2値とP値は一つのχ2分布曲線と対応しており、表現の違いに過ぎない。図1には、表1のデータから両者の関係を散布図に示す。当然ながら増減傾向の逆転はない。歪度と尖度の相関係数は、0.82と高い。χ2値と歪度・尖度との相関は比較的高く、それぞれ0.54と0.69を示す。P値は、χ2値と比べると、歪度・尖度との相関はかなり低い。 P値はχ2分布曲線の積分値を示しているために正規性を知る上で量的に最も理解し易いものであり、前述のようにχ2値と歪度・尖度との相関は比較的高いので、P値とχ2値を使って異常値を削除することに問題はないと考えられる。 カンタラス既存のプログラムではバグのために,個々の数値データを削除することもままならないのであるが,たとえ削除できたとしても、これまで述べてきたように散布図だけから評価すべきではない。既存のプログラムでは,横軸には測定サイクルの順番,縦軸に標準化した値(Z値)を示して,図上で絶対値が|2σ|や|3σ|を越える値を異常値として削除する方法が想定されている。しかしながら,表1の豊岡駄坂カキ殻7のように、最大値が+1.78σ、最小値が-1.25σであっても、+1.78σを削除することでP値は0.467(46.7%)から0.866(86.6%)というように急激に改善されるのである。 著者が実施している測定値の削除の方法は次のようである。すべての測定値のZ値の絶対値が2未満の場合、すべてのデータ(例えば25個)を使ってχ2値,P値(上側確率)を求める。次に,測定値のうちのZ値の最大値と最小値を確認し,絶対値のより大きいデータを先に削除し,残りの(例えば24個)測定値のχ2値,P値(上側確率)を求める。さらにそれに続くZ値の符号の異なる測定値を削除し,さらに残った(例えば23個の)測定値のχ2値,P値(上側確率)を求める。以上、3セットのχ2値,P値(上側確率)を比較し、最も低いχ2値,最も高いP値(上側確率)を示す測定値のセットを年代計算の元データとして採用する。 絶対値2以上のZ値を示す測定値がある場合,絶対値の大きいものから順次削除し,正規性の検定の二つのパラメータ値が改善されなくなるまで,削除と正規性の検定を繰り返すことになる。ただ、今までの経験では削除個数は最大3個に過ぎない。表1に示したように、削除個数が1個であっても劇的に正規性が高くなる場合があり、この処理過程は年代値に決定的な影響を与えるのである。 なお,Gupta and Polach (1985)によれば,絶対値が3σの値を超える測定値について,削除前後で次のパラメータが改善されるかどうかで判断している。そのパラメータとは,χ2値に対応する信頼度と,ガウシアン標準偏差/ポアッソン標準偏差比(正規分布の場合,1)である。とはいえ,この方法はすでに述べたように必ずしも適切ではない。

1.3 14C放射年代の決定過程

1.3.1 液体シンチレーション計測値の評価と年代計算基礎データ値の算出

当教室の試料作製過程では,クエンチングの影響はほぼ認められないので、W1Sp11(Channel 50-650)のcpm値に限定して14C放射年代の決定過程を示す。放射性炭素標準試料としてNIST,バックグラウンド試料として大理石,年代未知試料として沼サンゴ礁産キクメイシ化石試料を使用する。前章で示した方法で解析した結果を表2に示す。本表の上部には、年代計算のための基礎データ値と検定値を示している。中・下部には、正規性から見て不適切なデータを削除後の測定値を示す。NISTでは8番目(最大値)の計測値を削除しているが、このZ値は2.31で、これを削除することでP値は0.2643も改善している。大理石のZ値絶対値の最大値は-2.85であった。これを削除することでP値は0.0697まで低下した。沼サンゴ礁サンゴでは11番目(最大値)の計測値を削除しているが、このZ値は2.21で、これを削除することでP値は0.0038だけ改善している。図2ではNIST、大理石、そして年代未知試料が、個々の測定サイクルで、類似した変動をしていることが見られる。

1.3.2 放射性炭素年代値の算出

計算過程を表3に示す。上から下に向かって、バックグラウンドの計算、放射性炭素標準試料NISTの計算、年代未知試料の計算過程を示す。計算過程は、基本的にGupta and Polach(1985)に従っている。個々の測定値のバラツキは以下の計算では測定時間に組み込まれる形となっている。表中のグレイで塗った部分は、液シンなどの計測値を入力すべきセルであり、この入力の結果、最下部に放射性炭素年代が表示される。それでは、表3中の計算過程の行の左端に示したアラビア数字について以下、補足的に説明する。

 1. 毎分計数率は、試料の計数値cpmの平均値 なお、Nは総計数値gross countを示す。バックグラウンド、14Cスタンダード、年代未知試料のそれぞれで、この計算過程がある。NBは、バックグラウンドの総計数率gross countrateを意味する。試料重量によって異なるが、この換算は行っていない。バックグラウンド試料は重さで割ることによって放射能を評価できるものではないからである。この意味でも一連の測定試料の容量または重量は、一般的には一定にする必要がある。たとえばNNISTII+Bは、NIST試料の計数率の平均値を意味する。バックグラウンド以外の試料はすべて、バックグラウンド込みの計測値といえる。

 2..測定時間を含むポアッソン誤差

 3..計測平均重量とは、測定前と測定後(揮発)の試料ベンゼンの重量の平均値w=(W1+W2)/2  (gm.)

 4..試料重の効果を差し引いた総計数率 バックグラウンドの計数率はこのベンゼン重と単純に対応しないから,NIST,年代未知試料重をバックグラウンド重に標準化normalizeする。試料が足りない場合に、不活性ベンゼンinactive benzeneを追加するという意味の計算ではない。試料重量が異なると同じ計数効率の試料であっても重量によって放射能の誤差に差が生じるので,ここでその効果を排除している。試料総計数率(cpm)/ バックグラウンドC6H6ということ。

 5.試料重の効果を差し引いた総計数率の誤差 この式中の0.0003は,秤量器の誤差(当実験室の特定の電子天秤精度)

 6.試料の純計数率net countrate  なお、当教室での実験の結果,銅テフロンバイアルに差は無いと考えられるので,共通のバックグラウンドの毎分計数率を使うことができる。バックグラウンドを含めて試料溶液量は一致させている。

 7.安定炭素同位体補正によるNISTの標準化  NISTが現在の14C標準試料であり、δ13C値を使って-25艪ノ標準化する。1950年試料への補正係数は,0.7459である。δ13Cの測定値が無い場合は,便宜上-25にする。 次に試料の希釈の評価が想定される。二酸化炭素ガスまたはベンゼンで希釈した場合(それぞれのdilution factorをD1,D2とする)に,その希釈率の積D1×D2でこの純計数率を割る必要がある。ただし,当教室には回路内の気圧計はない。またANUではベンゼン段階での希釈は避けるべき(quenchingが生じる)とするので,結局,この過程は想定できない。なお、ベンゼン試料が少ない場合にはbutyl PBD粉末は使わず、PPO+DPO溶液を使用する(Koba, 2000). 

 8.δ13Cの測定値が無いときは,既存測定値の平均値と誤差を利用する場合がある。

 9.δ13Cの測定値が無いときは,δ13Cの計測誤差を最大で2.00程度とする。

 10.年代未知試料のモダーンとのネット放射能比

 11.安定炭素同位体補正による年代未知試料の標準化

 12.以上の計算結果を放射性壊変の式

  Age (t) = -8033*ln(ASN/AON) = -8033*ln(1+D14C/1000)     式〔2〕

にあてはめて、14C年代すなわち放射性炭素年代を求めることができる。

2. 放射性炭素年代から較正年代(暦年代)を求める方法

放射性炭素年代から較正年代(暦年代)を求めるプログラムのうち、最も利用されているのはCALIBであるがその著作権は, Minze Stuiver and Paula Reimer (1993)にあり,フリーウェアである。現有のCALIB Manualはrev.4.1のためのものである。最新のプログラムはProgram rev.4.3で,Macintoshにとっては操作性がWindows版に近くなり,rev.4.1用のCALIB Manualで示されているMacゆえの限界の多くがクリアされている。rev.4.1はMacOS 8.5に対応しなかったが,rev.4.3ではG3またはG4機のMacOS 8.5にも対応している。計算結果などの出力を保存する場合,旧バージョンではコマンドキー+シフトキー+F3キーで,スナップショットを撮るつまりPICTファイルを作成する方法しかなかったが, 新バージョンではテキスト表示部分は、テキストファイル形式で保存が可能となった。グラフの出力については、PICTファイルでの印刷およびディスクへの保存のためのコマンドが用意された。

2.1 プログラムファイルのダウンロードと解凍

MS-DOS, MS-Windows/MS-DOS,NT4やMacintosh用のCALIB関連ファイルは,次のwebアドレスからダウンロードすることができる。

http://www.radiocarbon.org/
http://depts.washington.edu/qil/calib/

圧縮ファイルなのでその後,Macintoshの場合は,フリーウェアのStuffIt Expanderで解凍する。

2.2 年代未知試料の14C年代や試料名などの入力

個々にデータを入力して較正年代を得る方法があるが,ここでは較正年代を得るのに必要なデータをエクセルのスプレッドシートに一括して入力する方法を示す。この方法では一つの表で最大100試料まで入出力が可能である。CALIB Manual for rev. 4.1の3.1.1 Data import from spreadsheetに簡潔にデータの入力法が記されているが,理解しにくいので、ここにその詳細を記す。

@ 用意されているc14fil2.xlsテンプレートファイルをMicrosoft Excelから開き,「別名で保存」を選び、試料に関連した名前を付けてcsv形式で保存する。 このスプレッドシートの最も上の2行が見出しになっている。3行目以下がデータで,1行に1試料のデータが入る。いくつかのセルにシングルマーク(ユ 半角)があるが,これは手入力してはならない。誤って消した場合には,他の行全体をそのままコピーアンドペーストすること。

A ここで,Lab code, sample code nameはいずれも「ユ」の間に半角10字以内。この名称が計算結果を出力する際のファイル名になるので,同じ名称を使用しないこと。 14C (conventional radiocarbon) age yr BP,reported error in radiocarbon age (1 standard deviation,s.d.)を入力するが,誤差の方はア値を一つにまとめても問題はない。もう1行にマイナス値を入力すれば,別々に求めることもできる。文字や数値の間にスペースやアポストロフィを入れないこと。 Laboratory error multiplier or additional lab varianceを特に考慮しない場合,またはこの特性値が不明の場合は,1にする。 次のAge span (yrs) for moving averagesはデータセットの数値から移動平均をする場合のデータ数 # of points in moving averageである。データセットが10年単位の年輪データの場合,10ポイントが使われる。 次の2列はUncorrected 14C dates only, Standard deviation (s.d.) in dateであるが,これは14C ageの同位体補正をしていない場合に使用する。14C ageは通常すでに補正済みなのですべて0にすること。 次のδ13C or estimateとUncertainty in δ13C (s.d.13C) or estimateもすでに同位体比補正ができているのであれば0で良いのであるが,測定値を入力する場合が多い。既存の試料の平均値を使う場合,その誤差はほぼ2と考えて良い。ここをゼロにするか2にするかでは,暦年代の差はほとんど出ない。 次の2列は年代試料が海の影響を受けている場合の試料についてである。試料の産地のリザーバー効果のモデル海洋リザーバーとの差をΔR(difference constituents)という(Stuiver and Braziunas, 1993)。この値がある場所でより高い場合は+,低い場合はマイナス値となる。基礎データがない場合は,0とする。 次の% marine C(arbon)は,年代試料が陸と海の両方の影響を受けている場合の比(%)である。海洋の影響が100%ならば,100である(CALIB Manualのセクション1.3.5 Percent of marine carbonが参考になる。人類などは貝などの海起源の生物と穀物などの陸起源の生物を食しており,この人骨などへの両者の影響を安定炭素同位体比によって評価する必要がある(Ambrose and Norr, 1993)。その評価の結果から% marine C(arbon)を想定することが可能となる。この値から暦年代を求めるデータセットモmixedモ calibration Dataset Dが用意されている)。 ちなみに,Ambrose and Norr (1993)のFig. 7には骨格中のδ13C値と腓4 Energy in Diet(この値が% marine Carbonと考えて良い)の関係が示されており,骨格中の炭酸塩についてはほぼ直線関係を示している。 Optional Description less than 80 charactersの列でも,文字や数値の間にスペースやアポストロフィを入れないこと。後の処理過程でセルデータが分割される不都合が生じる。スペースの代わりにモ_モを使えばよい。 最後の列は較正年代を出すために使うカーブ(データセット)の番号である。 CALIB rev.4.3のデータセットの名称は, データセット1.  0-350 14CyrBP 1年単位データセット。2〜3年の移動平均が推薦されている。 データセット2.  0-20,265 14CyrBP陸棲生物。 データセット3.  460-20,760 14CyrBP海棲生物。 データセット4.  海棲生物と陸棲生物の混合相。海棲が100%の時,p値が1。 なお,この名称はCALIB rev.4.1やマニュアルと異なり,データセット番号の1と2が入れ替わっている。

B 入力が終わったら,まずエクセルで保存(.xls)して,その次にcsv形式(comma separated value format)で保存する。file name extensionを.csv(英数字半角8文字.csv形式)とすること。データ行の次の行の初めのセルに、データが終了していることを示すために^Zを入力しておいた方がよい。 作成した.csvファイルをCALIBが読めない場合は,エクセルのブックファイルを修正し,改めて.csvファイルを作成すること。DATA I/O MENUの4.Read import dataでこのファイルを読み込む。

2.3 スプレッドシート(csv形式)から較正年代を求めるー全過程

CALIBを立ち上げて,リターンキーを押すと,各種の選択メニューが表示される。つまり,@Preliminary Setup,AData handling,BCalculations,CGraphics,そしてDOthersである。すでに以前の選択は生きており,変更がない場合はこの選択を新規にする必要はない。 使用環境を変更してその環境(Calculation Options,Data Input/Output Options,そしてPlot Options Menu)を保存したい場合は,DOthersのS.Save Options to Disc (includes plot options)を選ぶこと。Calcoptというテキストファイルに保存される。このファイルには選択したデータベース番号も記録される。

@ Preliminary Setup
この2.Calculation Options Menuを開いて種々のOptionを選択する。選択すると各オプションのアルファベットの左に*印が付加される。A〜Cのうち,B.Calculation Method B: Probabilitiesを選ぶ。A. Calculation Method A: Intercepts with curveと比べて,14C年代誤差の確率的意義が継承される。ただし,いずれの方法も同時に選択が可能であり,その差を確認するために両者を選ぶ。 DとEのうち,D.Use lab error multiplier (k) to increase sample s.d. (toggle to f^2)を選んでおくこと。これを選ばないと,スプレッドシートに示したk値が使用されない。ただし,k値が求まっていない場合は,いずれにしろ意味はないが。 FまたはGでcalibration curveの平滑化の方法を選択する。Gは試料の年代幅によって自動的に加重移動平均する。Fはスプレッドシート中のデータを使用する。一応,Fを選んだ場合を想定して10年を入れているが。 Hは14C放射年代の炭素同位体補正がなされていない場合に選ぶ。δ13Cが得られていなくても,規定値で補正するのが普通であり,このオプションを使用する機会はないであろう。 Iは,計算後に生成されるファイル名として,sample codeかLab codeを選ぶオプションである。筆者は,sample codeを選択している。 Jは信頼性の高い14C放射年代と暦年代データがある場合に使用が可能となる。 Kは南半球の試料の場合に選択する。 LとMはそれぞれ,cal AD/BC年代とcal BP年代の出力オプションである。いずれも有用であることが多く,両者を選択する。 NとOはそれぞれ,較正年代の範囲を14C放射年代 の年代誤差1σと2σで出力する。 QはΔ14C値の出力のオプションである。筆者は選択している。 Pは個々の試料の入力と出力のたびに小休止を置くオプションであるが,スプレッドシートを使う場合は,関係ない。 Sは計算結果をスクリーンに表示するかどうかである。計算をしているのかどうかがわかるので,選択する。

A Data handling
スプレッドシートの場合,IMPORT/INPUT FILE AND FORMATを選択し,Set input data formatで示されている5形式のうち,5.Comma separated text file (*.csv)を選ぶ。次に,3.Enter import file nameを選び,具体的なファイル名(*.csv)を入力する。*に対しては半角英数字8文字まで。選択後,メニューの3.Enter import file nameの下に ミcurrently*.csvと表示されている。 以上の操作は,年代計算に入る前の所作であるが,次の4.Read import dataを選ぶと,自動的に先のオペレーション名.csvファイルを呼び出す。ここでの表示で,試料数が一致している場合は問題ないが,試料数など一致しない場合は,オペレーション名.csvファイルの問題部分を修正すること。ただし,csv形式のファイルの修正はうまく行かない場合があり,xls形式のエクセルファイルを修正して,改めてcsv形式のファイルを作成する必要がある。 次に出力データを設定する。EXPORT AND TEXT FILES AND FORMATの5.Set export formatを選択し,1.Tab delimited text for spreadsheet importを選択する。2.や3.でもエクセルでは問題ないが,規定値ではない。次に6.Enter export file nameを選んで*.xlsとするが,面倒ならば規定名のmyoutput.xlsのままにする。ただし,前の計算結果が含まれている場合は,前もってそのファイルをコピーして保存すること。7.Enter annotated results (text) file nameでも新規に作るかどうか。規定名はnew2.lstだが,筆者はannotat.lstとしている。 Data handlingの4.Sample Selection and Testing Menuでは,スプレッドシート情報の操作ができるのであるが,このオプションは大変面倒なので,スプレッドシート作成時にすべて決定しておく。つまりは,このオプションは使わない。ただ,データが正しく読み込めているかどうかをこの表示SAMPLE SELECTION MENUで確認することができる。V.View calibration resultsを選択すると,較正年代の計算結果が試料ごとにテキストで表示される。ただ,このような表示は必要ではない。 

B Calculations
5.Calibrateの選択で,較正年代の計算が実施される。6.Sum probabilitiesは,選択しない。 

C Graphics
7.以外のコマンドはプログラムバグのために使用できない。7.Plot Options Menuを選択する。このサブメニューには3種類のプロット法が示されている。つまり,1. CALIBRATED AGE RANGES, 2.PROBABILITY DISTRIBUTIONSムMethod B[vi] only, 3.CALIBRATION CURVEである。いずれを選ぶかは目的による。3.を選ぶと14C放射年代と較正年代との関連が図示される(図3)。ただ、これには確率的情報が少ない。1.はオペレーション名.csvファイルに示した試料の年代幅が一つの図にまとめて示されるが,その確かさが不明で使用に耐え得ない。 2. PROBABILITY DISTRIBUTIONSムMethod B onlyは最も多くの確率情報を持っており、この点で優れている。このサブメニューのうちで,A.またはB.,そしてD.またはE.を選択することになる。それぞれがトグルになっている。確率的観点からA及びDを選択する。F. Include stratigraphic /calendar markerも選択する。 その上で,まずは8. Plot first selected sample or group of samples to screenを選択する。その結果,入力データの最初の試料のグラフが表示される。このファイルを保存し,必要ならば印刷する。次に,N. Plot next selected sample or group of samples to screenを選択する。同様の手続きを行い,試料数が続く限りN.を選択する。 沼サンゴの出力結果を図4に示す。

D Others
ここには,オプションのハードディスクへの保存やプログラムの終了といったコマンドが配されている。

2.4 日常的なCALIBの操作過程

前章で述べた操作過程は,いわば初期設定である。ここでは基本的な初期設定の後の,日常的な操作過程を示す。入出力過程で生成されるファイルは,オペレーション名.xls(スプレッドシート),オペレーション名.csv(スプレッドシート),calib output(テキスト),calcopt(テキスト),myouotput.xls(スプレッドシート),annotat.lst(テキスト,既存名はnew2.lst),各サンプルのサンプル名.C00(テキスト)やサンプル名.A01(テキスト)などである。なお,すべてのファイルはCALIBのアプリケーションプログラムが含まれるフォルダー内に位置する必要がある。 calib output(テキスト)には計算過程で表示された内容がすべてきテキスト形式で保存される。calcopt(テキスト)には,CALIBでの初期設定などが記録されている。CALIBはこれをもとに処理してゆく。

2.4.1  14C放射年代値などの入力

前述の「年代未知試料の14C年代や試料名などの入力」に示す方法でエクセルを使って オペレーション名.xlsファイルにデータを入力し,その後に オペレーション名.csv(csvファイル形式)でも保存する。データを入力した最終行の次の行の左端セルには^zを入力すること。

2.4.2 CALIBでの操作

メインメニューの3.Data Input/Output Menuの下位の3.Enter import file name(この下に前回のオペレーション名.csvが表示されている)を選択し,次のオペレーション名.csvを入力する。 次に,3.Enter import file nameに続いて表示されている4.Read Import dataを選択する。ここでの試料数の表示が一致しておれば次に進むが問題があれば,上記の方法で修正する。読み込みファイル名とimport file nameが一致しない場合もありうる。CALIBを閉じて再度立ち上げた場合には,改めてファイルを読み込む必要がある。 次に出力ファイル名myoutput.xls(スプレッドシート)および注釈ファイル名annotat.lst(テキスト)の設定であるが,変更する必要はない。この両ファイルに計算結果が記録される。 次に,メインメニューの5.Calibrateを実施する。ここで初めて計算処理が実施され,画面にその結果が表示される。これはcalib outputというテキストファイルに保存される。計算結果は上記のmyoutput.xls(スプレッドシート)とannotat.lst(テキスト),そして個々にサンプル名.C00やサンプル名.A00などのテキストファイルに出力される。 そして,14C年代と較正年代との関係をプロットする。メインメニューの7.Plot Options Menuを選択し,まずはM.を選択し,その後は試料数だけ繰り返しN.を選択して,グラフを表示し,ファイルを保存,必要ならば印刷する。何らかのトラブルがあった場合,最初の試料からグラフ表示するには8.を選択し,その後はNを選択する。グラフの表示から抜け出すには,リターンキーを毎回打鍵する。 メインメニューに戻って,CALIBを終了する。

2.4.3入出力ファイルの整理

CALIBプログラムファイルを含むフォルダー中の試料を整理して,別フォルダーにまとめて,保管する。その上で,CALIBの計算過程を経て,その結果が出力ファイルに記録される。計算の後,試料数に対応したファイルが生成されるので,出力ファイルとともに入力ファイルも別のフォルダーに保存する必要がある。

別フォルダーに移動またはコピーするファイルは次のファイルである。

データ入力
 オペレーション名.xls(スプレッドシート)コピー
 オペレーション名.csv(スプレッドシート)移動

較正計算のための初期条件
 calcopt(テキスト)コピー

計算結果(テキスト情報)
  myouotput.xls(スプレッドシート、較正年代値の出力)コピー
  annotat.lst(テキスト,既存名はnew2.lst、較正年代のすべてのテキスト情報)コピー
  各サンプルのサンプル名.C00(テキスト、スペクトルのテキスト出力)やサンプル名.A01(テキスト)など

計算結果(グラフィック情報)
  サンプルごとのプロット(pictファイル、保存時に名称設定、 
  3.Calibration Curveを使った場合は、放射性炭素年代軸と較正年代軸の較正年代曲線 [例 図3] 
  2.Probability Distributionsを使った場合は、西暦年軸と確率軸の確率分布曲線     [例 図4])移動

なお、annotat.lstの主要部分の情報を沼サンゴを例として次に示す。

Listing file: annotat.lst  Export file: myoutput.xls                             #Numa2002  Date1 Numa standard                                     #Radiocarbon Age BP   6355 +/-206   #Delta R =    0.0 +/- 0.0
  Calibrated age(s) cal BC 4846  
            cal BP 6795              100.0% marine carbon
  cal AD/BC (cal BP) age ranges obtained from intercepts (Method A):
  one Sigma**   cal BC 5133 - 4642 (7082 - 6591)
  two Sigma**   cal BC 5334 - 4391 (7283 - 6340)

 Summary of above:
 maximum of cal age ranges (cal ages) minimum of cal age ranges:
  1 sigma cal BC 5133 (4846) 4642
       cal BP 7083 (6795) 6592                                      2 sigma cal BC 5334 (4846) 4391
       cal BP 7284 (6795) 6341

   cal AD/BC & cal BP age ranges (cal ages as above)                                 from probability distribution (Method B):

#  % area enclosed    cal BC (cal BP) age ranges    relative area under  
#                               probability distribution 
#   68.3 (1 sigma)  cal BC 5131 - 4646 (7080 - 6595)      1.000
#   95.4 (2 sigma)  cal BC 5319 - 4423 (7268 - 6372)      1.000

以 上

文献およびurl

網干善教・木庭元晴・小元久仁夫・米田文孝・佐々木修一・貝柄 徹・岩田央之・辻 康男,1999. 関西大学のベンゼンー液体シンチレーション法による放射性炭素年代測定法 氈D関西大学博物館紀要,No. 5,pp. 1-30.

木庭元晴, 2000. 放射性炭素年代測定法の自然史・文化史試料への適用と限界. 網干善教・木庭元晴・米田文孝編『畿内およびその周辺の考古遺物・遺跡の空間的・時系列的データベース作成 ム考古編年による放射性炭素年代軸の確立ムム(文部省科学研究費報告)』,pp. 5-37. 

木庭元晴・網干善教・米田文孝・水田信次郎・別所秀高・貝柄 徹・影山陽子・藤井 誉,2000a. 関西大学年代測定室のベンゼンー液体シンチレーション法に よる放射性炭素年代測定法:新しいリチウム反応槽を使ったカーバイドの合成. 史泉(関西大学史学・地理学会),No.92,pp. 34-53. 

木庭元晴・網干善教・米田文孝,2000b. 関西大学年代測定室のベンゼンー液体シンチレーション法による放射性炭素年代測定法。: 液体シンチレーション計測の実際. 関西大学文学論集,Vol.  50, No. 2,pp. 97-127.

Ambrose, S.H. and Norr, L., 1993.  Experimental evidence for the relationship of the carbon isotope ratios of whole diet and dietary protein to those of bone collagen and carbonate.  In Prehistoric Human Bone Archaeology at the Molecular Level (J.B. Lambert and G. Grupe, eds.) Springer-Verlag, Berlin, pp. 1-37.

Gupta, S.K., and H.A. Polach, 1985.  Radiocarbon Dating Practices at ANU.  Handbook of Radiocarbon Laboratory, Research School of Pacific Studies,  ANU, Canberra, 173p. Koba, M., 2000. Improved results using higher ratios of scintillator solution to benzene in liquid scintillation spectrometry.  Radiocarbon, Vol. 42, No. 2, pp. 295-303.

Stuiver, M., and Reimer, P.J., 1993.  Extended 14C database and revised CALIB 3.0 14C age calibration program.  In Stuiver, M., Long, A., and Kra, R.S., eds., Calibration 1993.Radiocarbon Vol. 35, No. 1, pp. 215-230.

Stuiver, M., and Braziunas, T.F., 1993. Modeling atmospheric 14C influences and 14C ages of marine samples back to 10,000 BC.  Radiocarbon, Vol. 35, p. 137-189.

Wallac Oy, 1992. User Manual: Spectrum Analysis Program for 1220 Quantulusェ. Version 2.15.

http://www.radiocarbon.org/ http://depts.washington.edu/qil/calib/

注------------------------------------------------------------------------

[i] Processes of radiocarbon dating at the Department of History and Geography, Kansai University (Code name: KU): radiocarbon age determination and its calibration to calendar year by Motoharu KOBA, Yoshinori ABOSHI, Fumitaka YONEDA

[ii] 液体シンチレーション計測は、年代未知試料とともにバックグラウンド試料と放射性炭素標準試料(現在は、NIST)を同系列で実施する。この同系列で得られた測定値を使って年代未知試料の放射性炭素年代を求めるのであるが、この際に、カンタラスではFigure of Merit (FM)値を最大にすることを優先している。すなわち、プログラムの「スペクトルのプロット」のところで、optimum soft windowを求めるのであるが、まず、F4 SPCalcキーを打鍵し、Formula (E%, FM, ノ, Age, ノ)マに、Fを入力する。つまりFM値の計算を選択。StdDPMを入れるプロンプトが出るのでこの値を入れる。なお、A = (NISTのcpm値)、B = (バックグラウンドのcpm値)とすると、stdDPM = ((A-B)*100)/テ(((A-B)テB)*B*0.7459)となる。さらにdecay correction値入力のプロンプトが出るがN(o)とする。画面にFigure of Merit, DPM value, counting efficiencyが表示される。次に、画面に表示されているスペクトルの使用範囲を、手動で左のカーソルは右へ、右のカーソルは左へ移動する。カーソルを止める度に画面に両カーソルの範囲のデータを使ったFM値などが更新される。FM値が最大になるようにカーソルを設定することになる。このwindowをoptimum soft windowという。ここで決定した両カーソルの位置のチャネル値を筆録する。年代計算は、Formula (E%, FM, ノ, Age, ノ)マに、Aを入力して試料重などのパラメータを入力してゆくことになるが、年代計算をする際には先に求めたoptimum soft windowを利用することになる。

[iii] ただし,測定時間が長いほどベンゼン溶液の揮発が進み,測定値の誤差が大きくなる。この問題はバイアルの蓋を強く締めることでほぼ回避できるが,計測前と計測後のバイアル全体の重量の計測は欠かすべきではない。1mgオーダーの差があった場合,測定前と測定後の重量の平均値をバイアル重量とする。ここでバイアル全体というのは,試料ベンゼン溶液とテフロンバイアルと銅製容器を意味する。

[iv] 例えばOrder13,Position13,Repetition1,そして外部線源を使った場合の試料については,Q131300N.000という名称になる。なお,プログラムバグのために,外部線源を使ってもNの位置にYが示されない。

[v] counts per minute 毎分カウント値 [vi] Method Bとは、Main Menu→Preliminary Setup→2. Calculation Options Menu→B. Calculation Method B:Probabilitiesに該当するものである。これに対して、Method AはIntercepts with curve。