Mar. 28, 2018 作成 Aug. 18, 2019追加
卒業論文を, 西村嘉助先生などのご指導で次のようにまとめた。投稿する上で, 当時, 中田高(東北大D院生), 若生達夫(宮城教育大学教授), 牧田肇(東北大助手), 高橋達郎(岡山大学教授)を初めとする先生方にご指導いただいた。
木庭元晴, 1974. 沖永良部島の海岸地形と沖積世高位海水準. 東北地理, Vol. 26, No. 1, pp. 37-44.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tga1948/26/1/26_1_37/_article/-char/ja/
しかし,この作成過程で調査時の測量手法に問題を感じて, いつか再調査をしたいと考えていた。米谷静二先生(鹿児島大学教授)の下での卒論で一年先輩の川口昇さんのご協力を得て,退職後の特契期間のこの時期に, 再調査に出ることになった。この再調査に当たっての調査方法をここにまとめてゆくことにした。
Mar. 28, 2018
————— レーザー測距儀による測量調査覚え書き —————
必要ツール: レーザー測距儀(充電済み),測距儀用の三脚,プリズム用(実際は軽いカメラ用)の三脚,25mテープ,iPhone。紙粘土とピン。
Locality name: 大ざっぱな地名,年月日+二桁数字,現在時刻。
測距前に:
1. 測距儀用の三脚の台座を目分量で水平に。
2. 測距儀を台座に設置して,整準ネジと水準器を使って水平に。
3. 器高をメジャーで計測する。
4. 電源ON
5. 本体を水平面で回転して,水平角を初期化する。ピッと鳴る。
6. 望遠鏡を上下方向に回転して高度目盛りのゼロセット。
7. iPhoneなどで磁北方向に向いて測距儀水平回転方向をロック。
8. 水平角のゼロセット。(角度キーを押して0セットを選択)
並行して,
1. Geographicaで位置情報を取得。
説明: 前もって沖永良部島の地形図を一括キャッシュ済み。wifiなどが無くてもiPhoneのgpsを使って地図上で位置の確認ができる。表示地図の中央クロスが現在地でマーカーをLocality No. を追加してゆく。
2. 設置点と測点域を含む写真をiPhoneで撮影する。写真撮影時にはフィールドノートに必ず時刻を記録する。
3. 現在地が不確かで地図上のランドマーク3点がわかるようであれば,後方交会法を実施する。
測距に関わって:
プリズムを使う場合は,測距1キーを使う。
ノンプリズムの場合は,測距2キーを使う。
表示キーは,次のようにセット。
1/4ページには, 2/4ページには,
HA# 度分秒 HA# 度分秒
VD# m VD# m
SD: m HD: m
ノッチなどの計測には,ノンプリズムを出来れば使う。
紙粘土とピンをコーナンで購入。紙粘土を石灰岩などに付けて,その上にマイラーをピン止めして,まとめて測量する。
1. 接眼レンズからクロスヘアのピント合わせ。
2. 望遠鏡にて視準,ターゲットにピント合わせ。
3. 測距1キーまたは測距2キーを押してレーザー発射。
4. 測量完了時に電源OFFそしてEnterキー。
5. かたづける前に器高計測をしたかどうかの確認をする。
6. 必ず,湾入部などで潮位と潮時を測る。計測できない場合には,測距儀移動の前に必ず,盛継点を求める。
7. プリズム格納。
紙粘土は, デビカ製の手芸用造形粘土デビクレイ500g コーナンで外税248円。ミツヤ製ボンゴピン 針長10mm約17本入り138
————— 磁北設定の問題点を改善する手法 —————
2019年春の調査でiPhoneの方位コンパスの限界を経験した。その経験をまずは間歇に記述する。そして,測量や場合によっては命に関わるリスクがスマートフォンの方位コンパスにあることを示し,メカニカルな方位コンパスが最も信頼できるであろうことを示したい。
沖永良部島知名町の大津勘ビーチロック域(鹿児島県2012年指定天然記念物)での測量調査で気づいたことである。大津勘ビーチロックは米谷静二(1966)に記述されている。測量には当時の学部生や知名町役場職員も協力している。この米谷静二の研究を通じてえ,知名町にとっては,ビーチロック=大津勘ビーチロック,となったようである。
次の「大津勘ビーチロックGE」画像はGEの画像上に2018春(ピン表示)と2019年春(白字と?)の測量調査地点などを示している。
大津勘ビーチロックGE
米谷静二(1966)の図2を次に示す。川口と木庭はこの図の - i - (ここでは大津勘北東ビーチ南東部と呼称)と, - k -, l, m, n(ここでは大津勘南東ビーチの南東部と呼称) の領域のビーチロックを調べた。
次の図は,大津勘南東ビーチの南東部を拡大表示したものである。この図で表記した北端の190401-ls1の海岸線に直交する断面図の測点の分布をExcelの散布図(190401-ls1 Prof.1)で下に示している。
大津勘南東ビーチの南東部
190401-ls1 Prof.1
この散布図は平面直角座標系 I である。ほぼ断面方向はほぼ東西になっている。この原因は, 190401-ls1サイトでのレーザー測距儀の磁北設定ミスによる。iPhoneの方位コンパスを誤信したためである。この結果の修正は次のようにした。上の「大津勘南東ビーチの南東部」の測点のうち,最も南東には,190405-ls1がある。このレーザー測距儀の設定の際の,磁北設定は幸い,妥当なものであった。というのは,このサイトから測定した断面図は海岸線に直交したのである。その結果と二つのもりかえ点を使って,補正することができた。Excelの一つのスプレッドシートをこのリンクに示す。
「大津勘ビーチロックGE」の図の2018年春の黄色のピンの断面測点の配列も,レーザー測距儀の磁北設定の誤りに由来することがわかる。修正する必要がある。これに続く陸域の測点はメジャーを優先しているので,磁北の影響がない。
「Excelの一つのスプレッドシートに」のリンクにも示しているが,方位コンパスとしては,SUUTO MC-2をまずは信頼しようと思う。この種のコンパスとしては最高級に属し,南北両半球に対応している。製品サイト,マニュアル,のリンクを示す。この機種は磁北偏差の機械的な補正もできるが,この設定は2度単位に限られる。測量に使用するには粗すぎるので,むしろ測量の場での磁北に対応するように,レーザー測距儀の水平角をゼロ設定した方がいい。磁北方向のゼロ設定は,方位コンパスをレーザー測距儀に接して実施するのでは粗くなる。レーザー測距儀の中心を通るように,SUUTOで磁北方向を視準し,その後,レーザー測距儀でそのコンパスで視準した地点を視準し,ゼロ設定をするという手法が最も優れていると考えられる。
沖永良部島では大津勘ビーチロック北西ビーチ南東部や南東ビーチ中央部付近ではiPhoneでは正しい磁北を得ることはできなかった。この理由として,知名町の中心の大山山頂の自衛隊レーダーサイトの影響の可能性が考えられる。できれば,レーザー測距儀で既知の3点を視準して,正しい地表位置(後方交会法)と
真北方向を求めたいとは思う。
————— Geographicaで得た位置情報の処理手順 —————
2.1 出力
http://motochan.sakura.ne.jp/public_html/KyozaiContents/43.htm#4
に記している。その3. 計測結果の出力,を参照いただきたい。
1. マーカー一覧で,左端の四角内にプラスの記号をタッチして,選択して,最下段の4アイコンの左端のチェックアイコンをクリック。
2. エクスポート
3. ファイルに保存,のうちの,Dropboxに移動,を選択する。
4. 保存対象のファイル名が,目印名称.gpx,と名付けられ,保存先として,当方が作成したGeographica_kml&kmzフォルダーが表示される。(この用意が無い場合,「別のフォルダを選択してください」をクリックすること)。右上の,保存,を選ぶと実行される。
ぼくの場合,マック上で,DropboxのGeographica_kml&kmzフォルダーを開くと,保存されると,表示に反映される。
5. Geographicaの説明を一切見ていない結果であろうが,複数選択した場合,リストの最上部に位置するgpxの目印名
がファイル名となる。ところが,複数選択したファイルはこの出力ファイルにすべて入っている。それぞれの目印について,<wpt lat="27.351793" lon="128.529741" iswarning="0">省略</wpt>,などとリストされているので,一括した一つのgpxファイルで足りることになる。
2.1 Google Earthにドラッグアンドドロップ
gpxファイルをGoogle Earthにドラッグアンドドロップをすることで,GEに表示される。その後,GEに保存したい場合はGE終了時にアラートされる指示に従うこと。
なお,Geographicaを使ってフィールドで登録した際の目印名称に問題がある場合があるので,GEへの登録前に,エディターを使って,名称の修正をする必要性がある。
2018年春の調査結果をまとめた際には,GrassGISを使用してkml出力したがその必要性が無いということである。
ただ,2018年春のデータについては,経緯度から平面直角座標系に変換して,GrassGISに入れたので,このxy座標値を利用して,測量結果を整理した。
2019年にはその作業をしなかったので,xy座標値が現段階で得られていない。GEでUTM座標値を読み取ってxy座標値を得るのが簡単ではあろうが,一応,2018年同様の平面直角座標を得ておこう。
2.3 経緯度座標座標値の国土地理院書式への変更
国土地理院の経緯度から平面直角座標系への変換サイト
https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/surveycalc/bl2xyf.html
を使って,変換するが,その前に経緯度値を国土地理院用の書式に変換する必要がある。それを,木庭の下記ページにエクセルファイルを掲載している。
http://motochan.sakura.ne.jp/public_html/GISContents/69.htm
concatenateの際に,経緯度の分秒が1桁の場合,"0",を挿入する必要があり,注意すること。
2.4 経緯度座標系から平面直角座標系への変換
経緯度の国土地理院の書式への変更後,
#緯度(dms) 経度(dms) 1系
261846.51520 1264657.76480
262237.41670 1264612.59150
260733.06750 1274301.95980
260938.89680 1275324.98430
261030.69820 1272111.03190
といった形式のbl2xy.inファイルを作成する必要が’ある。
国土地理院の平面直角座標への換算
https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/surveycalc/bl2xyf.html
出力された結果bl2xy.outは次のよう。
# このファイルは緯度経度から平面直角座標への換算結果(一括処理)です。
# 選択された測地系は「世界測地系」、平面直角座標系の系番号は「1」です。
# 出力項目は以下の通りです。
# 緯度(dms) 経度(dms) X座標(m) Y座標(m) 真北方向角(dms) 縮尺係数 コメント
#----------------------------------------------------------------------------
#緯度(dms) 経度(dms) 1系
272108.9064000000031 1283146.2540000000125 -625625.1573 -96016.3066 2645.37 1.00001377
272108.5608000000059 1283146.2900000000239 -625635.8025 -96015.3999 2645.35 1.00001376
272106.4548000000025 1283147.0676000000047 -625700.7911 -95994.5329 2644.96 1.00001371
など。
以上