情報収集衛星打ち上げ:
軍事利用の有効性への疑問と今後の破滅的とも言える迎撃ミサイル出費への危惧,
そして衛星情報の教育・研究利用への破格廉価公開の希望
 2003.3.30

 http://www.asahi.com/english/ やばいかなあ 許してください 朝日の読者ですう

 3月28日午前10時27分,鹿児島県南種子町の宇宙開発事業団種子島宇宙センターから国産ロケット「H2A」5号機が打ち上げられ,予定の軌道に乗った。これは軍事偵察衛星を2機搭載している。解像度1mの光学センサーを持つ「光学1号」と,レーダーで地上を捉える「レーダー1号」である。これらの衛星は子午線回帰の高緯度400〜600kmの軌道にのっている。それぞれの2号機がさらに打ち上げられる予定である。
 日本政府は,98年8月の北朝鮮からのテポドン事件を契機にアメリカの商業衛星利用から方針を転換する。これまではNASAから商業衛星データを購入してきた。その購入過程が朝日新聞に掲載されていたが,注文して1〜2ヶ月を要し,場所によっては注文することもできなかったという。これは一般のユーザーと同じ条件である。
 確かに,ミサイルが日本に飛んできても落ちるまでわからないというのは問題だ。米軍のパトリオットでもミサイルの迎撃の確率はかなり低いらしいが,偵察衛星の導入の次には迎撃ミサイル装置の整備だ。一体何基が必要となるのだろう。地対空ミサイルの整備は空対空,海対空と進んでゆく。ミサイルの威力も大きくないと撃墜力は低いだろう。どんどんと軍事費は増強されてゆく。「自衛隊」軍事力の増強の歯止めがあるのか,心配される。
 解像度1mは偵察衛星としてはいかにも寂しい。現商業衛星は60cmパンクロ解像度を持っている。米軍の軍事衛星は15cmらしい。さらに解析チームの育成などはこれからだという。結局は今の北朝鮮との緊張関係では全く役に立たないのに朝日新聞(3.27朝刊14版p.5)によるとこれらの費用に2500億円を要し,自民党代議士によると人工衛星の更新などを考慮すると毎年400億円の出費という。日米同盟もテポドンには何の効果も無かった。緊張関係を修復するよう努力することが最も大切だ。これを当然政府は承知だろうが。
 朝日新聞(3.28朝刊4版p.19)によると打ち上げは厳戒態勢のもとで行われた。北朝鮮との関係を考えるとわからないでもないが,解像度を考えると,商業衛星レベルであるから,この成果を公開すべきと思う。当然,場所や期間によっては公開に問題もあろうが,処理できたものから公開すべきだと思う。税金から年間400億円を支出するのであれば,まずは学術・教育利用に対しては,既存のイコノスなどの料金の1/10程度の価格(配布に係わる費用に限定)で公開すべきである。本プロジェクトのカバー範囲については,もうイコノスなどは要らない。現衛星データは,現航空測量の価格を勘案して決まった。業界の保護のためである。このようなことでは研究・教育利用が普及しないし,技術の個別的展開が望めない。

関東地方測量部での資料閲覧              2003.2.21作成

 感動。2003年2月18日から21日にかけて,東京九段下の第2合同庁舎9F国土地理院関東地方測量部に空中写真を閲覧するために出かけた。お名前はどなたも存じ上げないが,4日間の同閲覧室での判読作業の間に,観察した同室スタッフの来客への対応はまことに優れていた。来訪者のなかには常連の者もいるようではあったが,少なからず「初心者」特に隣地境界に絡む民事的トラブルで来ているようで,スタッフの対応は暖かく,的確で,来訪者の思いをサラッと受け止めて,安心と情報を与えていた。資料を取りに行くときは駆け足,そして来訪者が望めば,ともに時間を過ごしている。
 課長,男性スタッフ2名,そして女性スタッフ2名の暖かな対応が,今後も伝統になってくれればいいと願う。別の地方測量部では学生が卒論に関連してお邪魔したのであるが,見せていただけなかった,と嘆いた。

航空写真の閲覧の新しい形の提案                  2003.2.21作成

 東京の人がうらやましい。情報の集中を言う。
 あるアイデアのもと,琉球列島の空中写真を見直すことを思い立った。当初は,沖縄に行くことも考えたが,そういえば,本庁のつくばにあるではないか。娘の下宿に泊まる約束をして一度も実現していない。つくばのスタッフと話していたら,関東地方測量部でも見ることが可能という。そこで娘のアパートでの1 泊も実現したし,写真もちょっとは見ることはできた。
 4日かけて見ることができたのは,読谷から名護付近までである。思った通りの世界が地表に展開していた。国土庁の土地分類図のうち沖縄全域の段丘分布図を7〜8年かけて作成した。その時はカラー1万分の1の空中写真を使ったので,観察枚数はかなりの数に上り,旧汀線を捉えることに集中した。そのために,あることを見過ごしていた。
 それはそれとして,琉球列島全域を4日足らずで判読しようと思ったことが大きな誤算であった。実は判読できたのは4万分の1写真が20枚ほどである。白黒の航空写真なら1枚1150円であるから,23,000円ほどで買うことができる。今回の旅行で8万円使っている。結果的には,買った方が良かったと言えるかもしれぬのであるが,ぼくはどうも手許にあると,仕事をしない傾向がある。その点では,やっぱり東京に行って良かったと思う。
 しかし,このような案はどうだろう。つくば所蔵の全国の航空写真をあと1部作成する。そのコピーは全国の地方測量部への貸し出し用とする。送料は利用者が負担する。最寄りの地方測量部で閲覧するという訳である。

数値地図の問題点                   2003.2.21作成

 国土地理院製「数値地図」のGIS的利用のためには高度情報が不可欠である。現在, 50mメッシュ(いくつかの火山地域では10m)DEMが提供されているが,ハザードマップなどで利用するには役に立たない。そこで,コンサルタント関係の業者から購入しようとするとべらぼうに高い。行政では特に津波襲来の危機感を持つ志摩町などは1億円近い費用をこのDEM作成に投じている。茨木市のお隣の高槻市でも数千万円?を投じたようである。コンサルタント関係業者のビジネスにはなっているのであるが,公開されないので,国レベルで費用対効果を見ると,国の損失と言えるのではないか。早急の10mメッシュDEMの充実を都市部からお願いしたい。
 なお,経緯度ベースのMEMは欧米製のGISソフトには対応しない。USGS型のDEM形式も併せて提供頂きたいものである。