新月のかけ

 父生存中の業績を今後、公開したいと思う。その業績のなかで、新月のかけは父へのまたは信頼できる人たちへの出口王仁三郎言行録であり、今後ますます王仁三郎研究の重要な資料となろう。古くは東京の鈴木ご一家のご尽力で手書きまたは邦文タイプで印刷された。「如是我聞 新月の影」という。タニハから新しく出版されたのは1988年である。(画像) さきの簡易印刷の新月のかけの内容の一部は伏され、さらに文献などが追加されている。

 父昇天の後については、入手希望者が多く残部が少ないこともあってお譲りすることはお断りし、研究機関には寄付した。

 新しく本年(2002年)、八幡書店から上下巻に分けて出版された。(画像) Amazon.comから注文が可能であったが、在庫切れになっている。今年の出版で新月のキーワードでは12月まで売れている順番のトップに位置していたが在庫切れが続いている。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4893503758/qid=1040920518/sr=1-1/ref=sr_1_0_1/249-8467110-8137134

以下、新刊書下巻の末尾にある、「改訂版の発行にあたって」と「編者履歴」と「参考文献(編者編書大本事件関係」を、再掲する。


改訂版の発行にあたって

 八幡書店のご尽力でこのたび改訂版が出版されることになった。内容に実質的変化はないが、書式などの改善で読みやすくなった。原著は日本タニハ文化研究所から一九八八年十二月八日に発行されている。父木庭次守は大正六(一九一七)年一月一日熊本市に生まれ、翌年父親をスペイン風邪で失う。十五歳時、出口王仁三郎の教えを聞き、熊本県立師範学校を中退。翌昭和八(一九三三)年七月には大本運動に参加している。平成五(一九九三)年八月一七日昇天(七十七歳、以下かぞえ年)、恒天暦一年に当たる間、大本運動に深く係わった。昭和十一年、二十歳の時に逮捕され投獄される。父によれば、首にかすかに見られた傷は特高の取り調べが激しく、聖師に不利な証言をすることを畏れて自殺を図った時のものであった。
 父の最大の功績は、大本第二次事件の際の弁護資料作成にあるだろう。事件前には聖師から知遇を得ることもなかった九州の青年が弁護資料の最も核の部分を作成したことは驚異と言える。父が昭和十三年秋(父二十二歳)にまとめた「霊界物語三神系時代別活動表と説明書」、昭和十四年の「大本教義と予審終結決定教義」が昭和十七年七月の控訴院高野綱雄裁判長判決、つまり治安維持法違反無罪を導くのである。本書昭和十七年の「ああ王仁が書いたのか」を参照願いたいが、この段の不思議を、父に神の存在を問うた時の例証として聞いた覚えがある。
 父の神への畏敬の念は深く、出口聖師と二代教主出口すみ子様に対する親しみは父の救いともなった。聖師は父にとっては余りに早く失った実父に代わる存在であったかもしれない。聖師の文献を学び、疑問点を一つ一つ、著者本人から聞いている。自ら直弟子と名乗るように、今までの王仁三郎論が外野からしかも異なる思想からの評価であったのに対して、本書に批判的観点は存在しない。当時の科学からしても現在の読者からしても、例えば地球観など理解しがたい部分があるが、聖師の思想がそのままに記されている。父のこういった姿勢があってこそ、本書が出口王仁三郎玉言集として価値を持つのである。本書には父が出会った人々の思い出話も数多い。いわゆるお陰話もあるが、その真偽については話者の人柄から父が選別している。本書に意図的な偽りはない。
 父が小学生の折、近所の書店で科学書を連日立ち読みして、書店の主人が自宅に持ち帰りなさいと貸してくれたという。夜、大切に読み終わって必ず朝早く返却した。科学者の道に進みたかったが、家計の事情で師範学校に進んだ。聖師の教えとの関連もあろうが、地球の歴史に強い関心を示し、日本博物館協会、日本地質学会、日本第四紀学会、京都鉱物趣味の会、などの戦後草創期からの会員であり、学会でこそ多くの友人を得ている。
 父の名前が明記されなかったり削除された資料も数多いが、父の多くの編著が、重要な大本文献となっているのは、父の生来の誠実な性格と科学者への憧れと、そして出口聖師とすみ子様の愛によっているのである。
 父を失った悲しみは深く、父がキヤノン製カメラを楽しそうに手入れをしたり、届いた書物を必ず一ページずつ落丁や乱丁がないかを調べていた姿、テレビの大相撲をメガネ越しに見ながら原稿を執筆していた様子、そして亡くなる前の衰えた姿が思い出される。このたび、再版の機会を頂いた八幡書店の武田崇元氏、入力や編集の労を執っていただいた堀本敏雄氏に心より感謝する。父の大本運動支援のためにご援助頂いた方は数多い。父の生前に営々と続けられたタニハ文化祭は、細々ながら父の昇天の後も心ある人々によって続けられている。                            
 平成十四年一月三日
                         木庭元晴
関西大学文学部教授(理学博士)

編者略歴

木庭 次守(こば つぎもり)
 大正六年一月一日、木庭才記、フデの第三子(長男繁、長女フサエ、次男次守、三男輝男)として熊本市本荘町六四五番地に生まれる。熊本市立本荘尋常高等小学校を経て、熊本縣立師範学校第一部入学。三年の頃、大本の出口王仁三郎教祖の教えに感動して休学。昭和八年七月、大本運動に参加する。大本九州別院から、人類愛善新聞の頒布に従事し、九州及び山陽山陰地方、近畿地方を行脚。精神国防運動、皇道宣揚運動に参加する。昭和神聖運動に参加し、講演、座談に従事し九州を巡る。大本第二次事件で検挙され、百五日間投獄される。昭和十三年三月三日より昭和二十年十月十七日勅令による大赦令で免訴となるまで専ら弁護活動に従事。出口王仁三郎聖師と夫人の大本二代教主出口澄子刀自の下で大本の新発足のために尽力し、日本全国で講演、講座、座談をして、新日本建設運動と大本の神教宣布に専念した。また世界連邦運動に参加した。
 大本本部講師、大本大道場主事・講師、愛善みづほ会指導員補、大本教学院常任委員、人類愛善会講師、大本七十年史編集委員、大本大道場次長、宣教部長、祭教院教学委員、出口王仁三郎全集編集委員として奉仕。現在は大本正宣伝使、日本タニハ文化研究所代表。日本博物館協会会員、日本地質学会会員、日本第四紀学会会員、日本岩石鉱物鉱床学会会員、日本地学研究会会員、全日本博物館学会会員、丹波史談会会員、国立民族博物館友の会会員、京都府総合資料館友の会会員。

参考文献

木庭次守編書
「霊界物語小事典」
「霊界物語資料篇」
「霊界物語三神系時代別活動表同説明書」
「大本教義と予審終結決定教義」
「霊界物語の啓示の世界」
「大本教義」
「大本事件裏話」
「埴安村物語」
「大本事件裁判事務所」
「世直し博士物申す」
「みろくに就て」
「神に就て」
「霊界は実在する」上・下巻
「大本四大綱領」
「大本四大主義」
「宗教世界会議」
「愛善健康法」
「霊界物語拝読の栞」
「霊界物語の大精神」
「如是我聞 新月の影」
「歌集言華」
「歌集 月照山」
「歌集 神国の花」
「霊界物語余白歌集」
「双六地上天国」
「天祥地瑞神名事典」
「荒鷲」
「朝嵐」
「大本信仰と農村問題」第一集、第二集
「大本青年講座」第一集、第二集、第三集
「霊界物語資料編 第一部 大本の教理索引(全)」
「霊界物語資料編 第二部 神の経綸史索引 上・下」
「霊界物語資料編 第三部 地上天国索引 上・中・下壱・下弐」
「霊界物語資料編 第四部 ご神名索引」
「霊界物語拝読の栞」
「神素盞嗚尊」
主な参考文献
大本教典関係
「霊界物語」全八十一巻八十三冊
「大本神諭」天の巻 火の巻
「歌日記」全四十五巻(出口瑞月著)
「出口王仁三郎全集」全八巻
「王仁文庫」全十巻(出口瑞月著)
「道の栞」(出口瑞月著)
「道の大本」(出口瑞月著)
「裏の神諭」(出口瑞月著)
「惟神の道」(出口王仁三郎著)
「水鏡」「月鏡」「玉鏡」(出口瑞月著)
「歌集 全十一巻」(出口瑞月著)
「皇道維新と経綸」(出口王仁三郎著)
第十二歌集「言華」(出口王仁三郎著)
第十三歌集「月照山」(出口王仁三郎著)
第十四歌集「神国の花」(出口王仁三郎著)
「如是我聞 新月の影」
「大本七十年史」上・下巻
「耀サ百選」(講談社)
大本の機関紙
「このみち」
「直霊軍」
「敷島新報」
「神霊界」
「神の国」
「月光」
「月明」
「明光」
「真如の光」
「人類愛善新聞」
「昭和青年」
「昭和」
「神聖」
「大本教学」
「愛善苑」
「海潮」
「木の花」

大本事件関係

大本第二次事件、出口王仁三郎警察聴取書。検事聴取書。予審訊問調書。予審終結決定。第一審公判調書、同速記録、検事論告。弁論要旨、判決書。控訴審公判調書、検事論告、弁護要旨、上申書、判決書。提出証拠、大審院上告書、上告趣意書、検事論告、弁論要旨、判決書。写真類。関係被告の調書、上申書類。もと大臣、検察官、判事、書記の談話。大本第一次事件の関係書類。関係文献
「暁の鳥」(天声社)
「言霊学」(中村孝道著、杉庵思軒著、大石凝真素美著)
「古事記」
「日本書紀」
「延喜式祝詞」
「古語拾遺」
「万葉集」
「倭姫世記」
「列子」(明治書院)
「謡曲通解」(大和田建樹編・博文館蔵版)
「熾仁親王日記」巻一乃至巻六
「読史備要」(東京大学史料編纂所編)
「オオミズナギトリと冠島・小島嶼の生物地理」(丹信実著)
「神宮・明治百年史」
「熱田神宮昭和造営史」
「歴史手帳」
「世界大百科事典」(平凡社)
「日本歴史大辞典」(河出書房)
「世界歴史」(岩波書店)
「カラー版 世界の歴史」(河出書房)
「昭和史」(岩波書店)
「神宮暦」(神宮司庁)
「万年暦」(阿部泰山著・京都書院)
「中国標準万年暦」(鮑黎明編・東洋書院)
「近代日本総合年表」(岩波書店)
「新版日本史年表」(歴史学研究会編・岩波書店)
「新・仏教辞典」(中村元監修・誠信書房)
「旧・新約聖書」(日本聖書協会)
「皇室制度史料太上天皇」(宮内庁書陵部編纂・吉川弘文館)
「近衛日記」(共同通信社編)
「日本歴史講座」(東京大学出版会)
「朝日百科 日本の歴史」
「国鉄全線全駅」(主婦の生活社)
「郷土史事典」(大塚史学会編)
「京都府誌」上・下巻(名著出版)
「京都の歴史」(学芸書林)
「京都五億年の旅」(地学団体研究会京都支部編・法律文化社)
「綾部町史」
「綾部市史」
「亀岡市史」
「篠村史」
「園部町史」
「福知山市史」
「舞鶴市史」
その他、古代タニハの国に属する京都府兵庫県の市町村史
「鳥取県史 巻一」
「別府市史」
「昭和史の瞬間」上・下巻(朝日新聞社)
「中ノ島史」(大阪)
「日本の土」(読売新聞社会部)
「日本大空襲」上・下巻(原田良治著・中公新書)
「大阪大空襲」(小山仁示著・東方出版)
「新編被害地震総覧」(宇佐美龍夫著・東京大学出版会)
「日本大空襲太平洋戦争写真史」(月刊沖縄社)
「伊勢神宮」(学生社)
「出雲大社」(学生社)
「熱田神宮」(学生社)
「住吉大社」(学生社)
「日本近代史辞典」(京都大学文学部・歴史教室編)
「地質学雑誌」
「博物館研究」
「民族学」(国立民族学博物館監修)
朝日新聞
京都新聞
毎日新聞
中外日報
宗教新聞写真と揮毫、染筆類
聖師の写真。聖師の揮毫。染筆。原稿。大本開祖のおふでさき。出口すみ子刀自の揮毫、染筆、御神体、茶碗。聖師製作類=第二次大本事件前の製作の茶碗類数百点。昭和二十年聖師製作の三千六百点の耀サ類、数百点。

 

2002.9.27本サイト収録