Jan. 7, '08 作成  追加

2層構造の電位と標準曲線法

 電極距離aを横軸,見かけ上の比抵抗ρを縦軸の値とし,両方の値の常用対数を取る。前者の値をx,後者の値をyとする。

 下記の表の左部分では,測定結果(a, R)とそれに基づいて計算した「見かけ上の比抵抗」
 右の横軸対数化,縦軸対数化は,LOG10()の関数で常用対数化した値(x, y)である。
 excel

 (x, y)の数値群を繋いでスプライン曲線を描いて,用意された標準曲線,補助曲線のグラフと対応づけることが必要となる。これを手作業ですると手間だし恣意的な曲線を描くことになる。そこでこの部分について,CADソフトを利用する。

 前もって,Illustratorに標準曲線と補助曲線が描かれたグラフの画像を下敷きにしたファイルを用意する。つまりは最も下のレイヤーにこの画像を配置しロックする。

 さて,(x, y) の数値群(第1列にx, 第2列にy)をtab区切りのテキストファイルで出力する。TubboCadを立ち上げて,File/Importをspline形式で実施する(TurboCadのunitをinchにしておく)。その結果,全座標点から作成されたスプライン曲線が表示される。座標点を明示するなら,Edit/Show Pointsにチェックを入れればいいが,この場合,スプライン曲線だけが必要なので,座標点は明示しない。

 (x, y)の座標群は常用対数化されている。それゆえCAD上の原点(0, 0)は,実は両対数グラフの(1, 1)に対応している。標準曲線と補助曲線の原点は(1, 1)で,両軸(電極距離aを横軸,見かけ上の比抵抗ρを縦軸)とも最大値は100つまり,常用対数値で(2, 2)である。
それゆえ,標準曲線または補助曲線が入ったIllstratorにCADのスプライン曲線を移す前に,CADの原点から長さ2の軸を作成しておく必要がある。

 そしてそのようにして出来た図(すぐ下の図)をIllstrator形式でexportする。このファイルはLeopardなどのOSに対応したIllustratorではファイルそのものをダブルクリックしても開くことができない。Illustrator CSなどから開くことになる。この場合,線幅を決めないと,見えない。スプライン曲線は2ポイント,座標軸は1ポイントほどが適当か。

CAD

 CAD上で全体をコピーして,Illustratorの標準曲線レイヤーの上のレイヤーにペーストすることも可能だがこの場合,外枠も作られる(ダイレクト選択ツールで削除可能)。コピーアンドペーストした場合は,Illstrator上で,スプライン曲線と両軸のオブジェクトをグループ化する。塗りは×,線は赤を選ぶ,線幅は2ポイントほどにするか。

 次に,CADから運んだ図と標準曲線のサイズを一致させる必要がある。原点を一致させて,シフトキーを押しながら対角方向に拡大または縮小して,CADでの(0, 2)と(2, 0)が標準曲線の(1, 100)と(100, 1)にそれぞれ一致させる。

 これで分析の準備はできた。標準曲線とスプライン曲線の間で絵合わせを実施することになる。絵合わせは,スプライン曲線を移動して標準曲線や補助曲線に合わせる。各段階で合わせることに成功すると,何れかの曲線の原点をプロットして,これをスプライン曲線(そして(x, y)軸)と合わせてグループ化する。そして,これをいずれかの曲線の座標位置に戻す必要がある。そのため,スプライン曲線と(x, y)軸をグループ化しておかなければならない。

 それでは,こういった準備を前提にして,「2層構造の電位と標準曲線法による解析」手順を以下に示す。なお,スプライン曲線は左から右へ,地中深くなってゆく。曲線を極大,極小,変曲点を考慮して,幾つかのセグメントに分けて,用意された標準曲線または補助曲線と最も近いものを探すことになる。事実上,セグメントに分ける必要性はなく,左から順次,絵合わせをしてゆけば良い。
不完全なデータではあるが,横河電機の戸山ヶ原の例で説明する。

1. このスプライン曲線はほぼ3セグメントに分けられるようである。左のセグメントは多少上に凸を示している。中央部がブロードで上に凸の部分と最もよく一致するのは,ρ2/ρ1=1/1.5の曲線である(すぐ下の図の黄色縦線の間)。一致させて,標準曲線の原点((x, y)=(1,1))をプロットし(原点O1(ゼロいち)とする,下の図),それをスプライン曲線とグループ化させる。

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2. そして,標準曲線のグラフの目盛の定位置に戻す。つまり,CADで作成した座標軸の交点(原点)を(1, 1) に合わせる(下の図)。そうすると,標準曲線の原点O1は(6.2, 240)に移動している。実は,これはρ/ρ1=1,a/d1=1に対応しており,6.2/d1=1,240/ρ1=1となる。それゆえ,d1=6.2,ρ1=240となる。つまり,第1層の比抵抗と深度である。

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3. ρ2/ρ1=1/1.5を使うと,ρ2=ρ1*1/1.5=240/1.5=160が求まる。

4. これまで使用してきたスプライン曲線全体をコピーして,補助曲線のファイルの新規レイヤーにペーストする。標準曲線と補助曲線の縮尺が同じなので,スケールを合わせる必要性はない。スプライン曲線の原点O1を補助曲線の原点(ρ2’/ρ1=1, d2/d1=1)に一致させる。そして,補助曲線の先ほど求めたρ2/ρ1=1/1.5に対応するカーブIIをトレースする(下の図)。スプライン曲線と補助曲線IIをグループ化する。

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5. そしてこのカーブを標準曲線に戻す。そして補助曲線IIを標準曲線の原点に滑らせながら,スプライン曲線の第2のセグメントの中央部分が最も一致する標準曲線を見いだす。そしてこの時の原点O2を書き写す(下の図)。この例では,ρ2/ρ1=1/50の曲線に対応し,これを曲線IIIとする。

6. このスプライン曲線やO2を含んだグループを,標準曲線の座標値に対応するように移動する(下の図)。O2の座標値,(33, 170)が得られるが,この単位は(a, ρ)であり,第1層と第2層をまとめて等価単一層として,地表からの深さd2(33 m)と,この等価単一層の比抵抗ρ2’(170 Ω-m)を表す。

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 標準曲線のρ2/ρ1に対応するものは,この場合,ρ3/ρ2’だから,ρ2/ρ1 = 1/50つまり,ρ3/ρ2’=ρ3/170=1/50で,ρ3= 3.4となる。

7.  4に実施したことを続けていく。繰り返すことになるが,O2を補助曲線の原点(O1と一つずれた形,つまりρ3’/ρ2=1, d3/d2=1)と重ね合わせて,前のIIIなる曲線と同じρ2/ρ1=1/50を書き写す。これを曲線IVとする。

8.  5と同様のことを実施する。つまり,標準曲線にペーストして,曲線IVを原点に沿って移動して,スプライン曲線の最も右のセグメントの中央部と一致する曲線(ρ2/ρ1=1/2.5,対応部分を黄色の線分で示す)を調べて,標準曲線の原点O3を書き写す(下の図)。

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9.  6と同様のことを実施する。 O3の座標値,(35, 105)が得られるが(下の図),この単位は(a, ρ)であり,第1層と第2層をまとめて等価単一層として,地表からの深さd3(35 m)と,この等価単一層の比抵抗ρ3’(105 Ω-m)を表す。
 標準曲線のρ2/ρ1に対応するものは,この場合,ρ4/ρ3’だから,ρ2/ρ1 = 1/2.5つまり,ρ4/ρ3’=ρ4/105=1/2.5で,ρ4= 42となる。

以上をまとめると,次のようになる。

地表からの深度m

比抵抗 Ω-m

地 質

6.2

240

乾燥土壌

33

160

湿潤土壌

35

3.4

 

42

 

なお,この例題の計算結果は,横河電気のものと異なる。当方の曲線対応法の方がより適切と考えている。