2005.6.21作成

水系図の例

 webを探してみたが,水系図の下に地形図が見られるものは一つもない。水系図を作成する過程で等高線から地形が見えてくるので,水系図作成の作業は学生が地形を学ぶ上で大変参考になる。地形図上に水系を描く作業を指示するのに,まずは例示しないと話にならない。というわけで,次の図を掲載することにした。これは,2003年卒業した中村真一郎君が作成したものである。茨木市史自然編の一環だ。彼がぼくに手渡したIllustratorファイルには地図画像が削除されていたので,適当に配置した(GISへの統合の際は座標で一致させる予定だが)。まあほぼ合っている。なお,中村君は,この作業を実施するのに,まずは紙地図で作業を実施している。その上で,その結果を見ながらIllustratorで完成させた。水系図の他に種々の地形作業レイヤーを載せてゆくのであるが,ここでは述べない。
 まずはこの図を観察して欲しい。

問題点: さて,上の図を観察して,いくつか疑問が生じたことと思う。
1. 山から谷底平野に至るまでに谷線が途切れている。
2. 特に,かなり高い位置であっても途切れている場合がある。
3. 谷底平野の谷線は現河道だが,これは人工的河道の可能性もある。

 まとめて,回答を示そう。
 1と3: この種の作業は,等高線から谷線(等高線が山側に凸でその最も山側の極大部分をつなぐ線)を抽出する。定常的に水が流れている必要はない。地下水が流れていたり,ある程度以上の降水があった際に河川化する場合がある。谷底平野の現河道は人の手が係わっていることが多い。このような河道を谷線としていいのだろうか。谷底平野の河道も詳細な等高線を見れば,上流側に凸ではあるが,谷底平野全体でみたら不自然なことも多い。とすれば,谷底平野の河道は線ではなく,帯と考えればどうだろう。とすれば,谷底平野までやってきた谷線が途切れてしまうことを防ぐことができる。
 2.: 谷底平野に達するかなり前に途切れるのは,それより下方の等高線が下方側に凸のためだ。水量が多くても,この部分から伏流水となる。崩壊による堆積物が溜まっている可能性が高い。

 上の図の等高線と谷線の関係をよく見て,水系図の書き方を考えて欲しい。

以 上