2008年1月30日作成開始 2月6日継続
1回きりの人生で小さいながらやりとげたいことは一杯あるんだなあ。それなのに目の前の雑駁なものや欲に追われて時間=人生をいたずらに消費してしまう。ほとんど,そうしてきた。と,感慨または焦燥感を持つ人はぼくだけではないだろう。ぼく自身,暗闇からの脱出法をここ数年考えてきた。スケッチブックに自分が考えていることを描いてみたり,比較的ハードなテーマについて,その進捗速度を速めるために,または観測するために,PDAに計画を書いてみたりした。しかし,ひ弱なぼくは日常を超えて,ハードなテーマ(この内容は人によって異なる)に入ることができない。最近,あることに困って,小さな書店で,忌避してきたビジネス書のコーナーに立った。ここで,Tony Buzan with Barry Buzan著「The Mind Map Book」BBC 2003(ザ・マインドマップ,神田昌典訳,ダイヤモンド社)に出会う。これを利用できないか,考えている。この本の内容自体,思想性があるわけではない。ただ,ぼくがこれまで実行できなかったコアをする上での自分の思いをマップにするということそのものが,テーマになっていた。この種の本で受動的には自らの展開を期待することはできないが,ただ,ぼくがこれまで考えてきたことと似通っているので,そういう意味で指針になるかも知れないと考えている。
GettingThingsDoneという考えがある。これはDavid Allen著「Getting Things Done: The Art of Stress-Free Productivity」Penguin Books 2001.(仕事を成し遂げる技術 ーストレスなく生産性を発揮する方法,森平慶司訳,はまの出版)に示されたものである。Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/Getting_Things_Done http://wiki.43folders.com/index.php/GTDに簡潔にこの内容が示されている。David Allen の会社のウェブサイトhttp://www.davidco.com/index.php とYou Tube http://www.youtube.com/watch?v=Qo7vUdKTlhk に氏の講演の様子が掲載されている。検索サイトで検索してみればいい。この種のサイトが何と多いことか。ITMediaのBIZ.IDに掲載されているGetting Things Done(GTD)まとめ http://www.itmedia.co.jp/bizid/gtd_index.html は具体的に社員が実験しており参考になる。http://gadget.cre8system.jp/gtd/gtd_plus_r.html も参考になる。ここにはGTDに関連したリンクがある。
さて,アレンによれば,最も実際的な方法は,「まず個々の到達点をその時点でできるだけ考えて,順位付けを重視することなく,自動的に実施する」ことだという。時間管理で重要なキーワードは,priorityではなく,control 抑制とperspective視野だという。 この観点から多様な仕事を実行するのには,次の三つのモデルがある。
1. A workflow process.
2. A framework with levels of focus.
3. A natural planning method.
第一のモデルworkflowには次の5 phases段階がある。
1. Collect, 2. Process, 3. Organize, 4. Review, 5. Do
ここで,仕事は,第二のモデル,つまり仕事を,低次から高次の6段階のfocus焦点(これはcontrolよりもperspectiveに重点が置かれているか)で分ける。()内はフライトのたとえである。MindMapを作成するうえで,いい取っかかりになろう。
1. Current actions(滑走路上)
2. Current process(10,000 feet)
3. Areas of responsibility(自分がすべきことかできることかを上空20,000feetから考える)
4. Yearly goals
5. 5 year vision
6. Life goals(50,000 feet)
毎週かならず,このそれぞれのレベルfocusの仕事の優先順序を見直す必要がある。できれば,毎朝,1日のすべきこと(優先順序)を考え,毎晩,できたこととできなかったことを反省する必要がある。
さて,二つのモデルは日常的なプロセスで可能であるが,三つ目のモデルは前者が水平的なのに対して垂直的な視点である。このnatural planning methodは5つの段階stageからなる。この枠組みを想定するのはまさにMindMapである。
1. Defining the purpose, 2. Envisioning the outcome, 3. Brainstorming, 4. Organizing, 5. Identifying next actions
ことを成すには,この5つのステージで前もって思い描かなければならない。敢えてこのモデルが独立しているのは,このモデルが最も創造的なものと考えられているからであろう。このモデルこそ,明示的な思考でしか実現しえないものであろう。
GTDの手順はつぎのようである。ぼくの脚色をかなり入れているので,オリジナルからはかなり外れている。上の三つのモデルがこれに含まれている。
1. 収集 collect stage この段階を理解するのはなかなか難しい。個々の人々によってかなりイメージするものは違うであろう。ぼくの場合なら,過去に置いてきた懸案(未だ忘却の彼方に行っていなくて,やるべきまたはよった方がいいと思っているもの),現実の諸案件,今後の案件,である。 現実の諸案件は厳しい現実を突きつけられているものを除けば,救世主的手法を要するものでは実はない。「生き馬の目の抜く」と形容できる世界に身を置いている人々を除けば。
過去に置いてきた懸案は,目に見えないもの,書類,試料,など種々の形でどこかに収まっている。
これはいわば最もcollectionと言いうるものである。GTDはただこれを言っているのではないらしい。現実の諸案件に限定している。と考えるとGTDがわかりやすいようにぼくは思う。GTDが考える項目は次のサイトに掲載されている。 http://wiki.43folders.com/index.php/Trigger_list このような区分はいかにもビジネス界のものである。ぼくはこの種の区分をしても詮無いと思う。
要するに多様な案件が
公私を問わず次から次とやってくる。それらに対して,重要度にかかわらず,まずは大きな箱に入れる。この方法を始める時は時間的にはバラバラだが,こなれてくると,深く考えずに,時系列に並べるのもいい,となる。
ところが,この種のことはぼくも過去してきた。机の上はすっきりするのであるが,目の前から無くなると,心への重しが小さくなって,目の前のことしかしなくなる。とは言っても,この物理量が大きく,置き場所に困る。というわけで,過去に机から外したものは周辺にうずたかく積まれたまま。一番のゴミは学会誌か。捨てるわけにも行かず,読む気持ちもない。以前は開封して所定の場所に整列させたが今はその元気もなく,机に積み上げて,邪魔になったら,本箱に隙間を作ってそこにごそっと入れている。
父は晩年,自らの巨大な書斎の廊下に時系列で段ボールに資料を突っ込む手法を取っていた。父は割り箸の鞘や送付されてくる紙類やヒモなども全く捨てなかった。だからいわばゴミの山と書類が一緒に段ボールに収まっていた。ぼくは父と比べると捨てる人種なのでそれほどの空間は消費はしないが,記憶力がお粗末なぼくだから,この手法が直接,生産性の低下につながる。
とにかく今,何らかの社会人として,インプットされるものを,これまでのように適当に区分けするのではなく,まずはもろもろのこと(stuffと表現)をただ置くという物理的手続きのステージと考える。この段階はGTDでなくても必ずあるのだけれど,ちょっと考えてしまって,ただ机などに置くことすらできない,ということを避ける手続きが,インプットされるものをただ置く,ことが重要としているのだ,と考える。 一言で言えば,インプットされたstuffを未整理で一つの山にするということになる。
2. 処理 process stage かならず上から作業を実施する。その場で(いちおう)処理するものと,のちに処理すべきものに分ける段階がこれである。
I その場で(いちおう)処理すべきもの
1. 2分以内でできるものなら,その場で実施 Do it now。← 2分ルールで片付くものは多い。この区分設定はGTDの魅力の一つだろう。
2. 2分ではできず,複雑ではないものは,next action listへ。机上のNextAction Boxへ。
3. 資料として保管すべきものは所定の場所へ。archive listに対応する。
4. 不要なものは捨てる。つまり本人からするとjunkになる。
5. いつかしたいと考えるものはsomeday/maybe listに入れる。 この処理は難しい。本棚のどこかのスペースに積み上げることになる。後にjunkになる可能性が高い。
II 後に処理すべきもの
1. 複雑でないが連絡待ちやその後の展開が必要な場合はcalendar (monitor) listに入れる。紙媒体などの物理的に保管する必要がある場合は,calendar (monitor) box に入れる。物理的に必要でない場合は,(ぼくの場合)いつも携帯しており入力がどこでも簡単なPDAザウルスのToDoファイルにアラーム設定をして入れる。
2. 複雑で計画を立てて実施する必要があるものは,project listまたはproject box へ。 ぼくの場合は,MoiraListに登録することになる。←この考えもGTDのポイントになる。
このステージで,収集段階で作った未整理の山は,必ず無くさなければならない。戻してはならない。
3. 整理 organize stage 如何に上記で作成したリストを生かし,完結してゆくかということである。上記のリストについて整理してしめす。
NextAction list or Box: 現在の次に実施すべきものの意味である。先に延ばしてはならないものである。これは複雑なものも比較的簡単なものもある。次から次と実施すべきものである。個々の系列の始まりのステップに当たるものである。たとえば,まずは電子メールを打つ,とか,何らかの注文をするとかである。
Project list or box: 何らかの大系を成すまたはなし得るもので,next actionをすぐさま実行できないものと言えるか。これが一番くせ者で,ついつい先延ばしをしてしまう。でもこれが最も本質的な仕事である。これが出来なければ,仕事そのものが実は意味をなさなくなる。常に追跡し,定期的に見直し,随時進めてゆくべきものである。これが一番難しい。これについては,別途,MoiraListのところで述べる。
Calendar (monitor) list: これは締め切りがある仕事や会議などの日程などである。カレンダーに書かねばならないが,次のaction listに書かれねばならない。next actionではないが,その次に続くaction listに書かれねばならない。と考えると,前述のproject listも結局,action listが実現されねばならない。
Next actionは,早急にすべきもの,Calendar listは締め切りが見えているものでこれもaction listから構成されねばならない。そして,Projectも時系列に組み込まれたaction listから構成されねばならないことになる。
結局,順位付けをしないで実行するのがGTDであった筈であるが,限られた時間のなかで,何らかの選択が必要となる。
これを背後からサポートするのがファイリングシステムであり,基本的に時系列,アルファベット順,など簡潔ですぐに手に取れる環境を作る必要がある。
4. 評価 Review stage 毎日,毎週,関連リストとボックスを総観しなければならない。そして実行を監視しなければならない。やり忘れたものはすぐにすること,一度区分したものは,難易に応じて実行するのではなく,リストの順番に機械的に従って実施しなければならない。
備忘録を作ることが進められている。毎月(12ヶ月分だから12個),毎日のフォルダー(31日文)を作る。つまり計43個のフォルダーが必要になる。毎日のフォルダーは順次,翌月の対応する日に移動させてゆく。会社などではこの方法はいいかもしれないが,これは必ずしも適切なものではない。ただカレンダーフォルダーは必要で,時系列で並べることは有効と言えよう。
5. 実行 Do stage 実行がプレッシャーになるようではダメだから,必要な行動が単純,簡易,楽であることが必要である。如何に仕事を単純なものの集まりにするかが重要であろう。
ツールについて
これを実現する道具は反古紙と鉛筆だけでいいという。ぼくの場合,FilemakerProのMoiraListテンプレート,MacOSX付属のカレンダーとToDoソフト iCAL(iPod touch), PDAザウルスのカレンダーソフト,そしてA4最後のスケッチブックである。最初に述べたテンプレートは,http://journal.mycom.co.jp/ad/contest/filemakersenshuken/08.html#4 からダウンロードできる。ただし,FilemakerPro v.8以上が必要である。
RememberTheMilkはGTDを実行する有名なソフトである。この詳細は種々のサイトに掲載されている。日本の公式ブログサイトは,http://blog.rememberthemilk.jp/ http://www.rememberthemilk.com/ である。ここに紹介されていたのであるが,技術評論社のweb連載記事は参考になる。
MoiraListについては別途紹介したい。日常的なToDoやCalendarソフトとしてRTM やGoogle関係ソフトは有効である。ただ,深い研究などにはこれが余り役立たないと思っている。
日常的に重要なプロセスは,Collect〜Doの流れであり,創造的な活動についてMindMapを作成し,このCollect〜DoのProjects-Actionsを作成し,毎週確認して更新してゆくことである。
以 上
これを書いた頃,ちょっとこの種のことをやってはみたが,今は日常に流されているだけである。小学校の頃から長期の休みに入ると計画表を作るのが好きだった。書いて本棚などに貼るのだが,その後は全くみなかった。悪い病気である。
旗のごと なびく冬日を ふと見たり (参考: 暖き 冬日あり 甘き空気あり)(虚子)
Dec. 16, 2010