2004年2月3日作成, 2019年7月18日修正

潮汐データの取得とその計算

 

   潮位データを取得するにはかつては,海上保安庁や気象庁から潮汐表を購入したり,気象協会に出向いて1ヶ月分1ページを150円で複写依頼するなどの必要があった。大阪では三洋商事だけで扱っており一般消費者からすると大変不便であり,一年の一日の潮位を知るためにわざわざ電車で出かけたり,銀行振り込みで購入するといったことも多く,大変不便であった。その後,両ウェブサイトで数年前の潮汐データの公開はあった。使えないなあ,と思っていたら,2003年2月3日現在は結構使えるようになった。NOAAをお手本にもっと早く公開して欲しかったのだが。

0. 潮汐データの取得ー予測とリアルタイム__海岸地形の研究の視点からすると全く役に立たない

 MIRCマリン情報には,メニューから選択した港湾の潮見表(干満時刻,月齢,潮名,日月出没時刻)を利用日からの2週間後または4週間後まで表示できる。標準港だけでなく,主要港の潮汐データも出るので便利だろう。潮汐の基礎知識もここで得ることができるが,まあ役立つものはないなあ。
http://www.mirc.jha.or.jp/online/w/w-tide/

 海上保安庁http://www.kaiho.mlit.go.jp/
の下記のリアルタイム験潮データは最近のものに限られる。
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/TIDE/real_time_tide/sel/index.htm

I. 気象庁のサイトの満潮ピークと干潮ピークから観測海面高を計算する

  気象庁ホーム > 各種データ・資料 > 海洋の健康診断表 > 潮汐・海面水位に関する診断表、データ > 潮位表 >
http://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/tide/suisan/index.php
ここで,標準港と表示期間,そして,それに関する満潮・干潮,毎時潮位(グラフ),などを表示,ダウンロードできる。予測値である。

  必要とするサイトが潮汐観測の標準港であることはほとんどなく,補正するパラメータから必要とする場所の最寄りの港の潮汐を計算する必要がある。
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/TIDE/enkan/Suijun_hyo/Pub.No741/Top.htm
この値を掲載しているサイトは結構移動するので, 海上保安庁のサイトで 「平均水面、最高水面 及び 最低水面一覧表」を検索すること。
  ここではここから読みとった運天港とその標準港である那覇港の関連数値を示す。
那覇港:
最低水面基本水準標下 3.88m 最低水面平均水面下(Z0) 1.18m 最低水面TP下m 空欄,
最高水面の平均水面上(Z0) 1.18m

運天港:
最低水面基本水準標下 3.45m 最低水面平均水面下(Z0) 1.10m 最低水面TP下m 空欄,
最高水面の平均水面上(Z0) 1.10m

  さらに,那覇港と運天港の潮時差と潮高比を先に求めておく必要がある。これはネット上には見つからないので,毎年発行される海上保安庁発行「潮汐表 第1巻 日本及び付近」(書誌781号,ほぼ最後部に掲載)などを購入するか,図書館などで見る必要がある。この値の変動はほとんどないのである年のものを持っておればかなりの長期間に亘って使うことができる。
  さて, このコピーのリンクをここに掲載している。 これから読み取った例が次のものである。
運天港の改正数は,那覇港と比べて,潮時差 -0h05m,潮高比0.92

さて,以上のデータから任意の時間の潮位を求めることができる。以下に。

目的: 沖縄島附属島「屋我地島」北海岸大堂原貝塚の「測量時の海面高度」の現地の中等潮位からの高さを求める。調査地点の海面を計測した日時は12:45, Nov. 23, 2003
この場所の近くに運天港がある。これを最寄りの港とする。最寄りデータが無い場合には,潮汐の計測が必要になるがここでは述べない。運天港の標準港は那覇港である。上に述べてきた部分の重複があるが,ここから読んでもわかるように配慮している。

1. 調査地点大堂原貝塚海岸の最寄り港を調べる。
  海上保安庁http://www1.kaiho.mlit.go.jpから,左のフレームにある刊行物のうち,「平均水面等一覧 」をクリックして「平均水面、最高水面 及び 最低水面一覧表 」の一覧表をクリックすると,pdfが表示される。ただ,信じられないくらい重いので,「一覧表」を選んでダウンロードした方がいい。このリストから最寄りの港を知る。

2. この場合は運天港であるが,1.で示した「平均水面等一覧 」を見ると標準港が那覇港であることがわかる。さらに運天港と那覇港の潮汐パラメータを読みとる。
  那覇港:
最低水面基本水準標下 3.88m 最低水面平均水面下(Z0) 1.18m 最低水面TP下m 空欄,
最高水面の平均水面上(Z0) 1.18m
  運天港:
最低水面基本水準標下 3.45m 最低水面平均水面下(Z0) 1.10m 最低水面TP下m 空欄,
最高水面の平均水面上(Z0) 1.10m

3. 那覇港の目的とする日の,潮汐データを次のサイトから調べる。
  気象庁のサイトの潮汐観測資料http://www.data.kishou.go.jp/db/tide/suisan/index.php
  ここでの表示(予測値であることに注意)のうち,干満の潮時と潮高を下に示す。
満潮は6:37 341cm 18:11 354cm ,干潮は0:14 141cm 12:21 194cm。
  さて,次に使用する木庭作成のエクセルファイルは潮汐表のデータを入力する形になっている。潮汐表の干満データは略最低低潮位からの高度値になっている。このページの潮位は先に示したように,観測基準面の標高は,-258(cm)だから,中等潮位からの高度はこれらの値から258cmを引いたものである。面倒ではあるがさらに略最低低潮位からの中等潮位の値を追加する必要がある。たとえば6:37の潮位は,341-258+118=201cmとなる。潮位の極大・極小の値を表にすると次のようになる。

1st
2nd
3rd
4th
干満
干潮
満潮
干潮
満潮
時間
0:14
6:37
12:21

18:11

Z0からの高度
1 cm
201 cm
54 cm
214 cm

II. 気象庁のサイトの毎時刻潮位データで確認しつつ観測海面高を計算する

   潮時差と潮高比を先に求めておく必要がある。これはネット上には見つからないので,毎年発行される海上保安庁発行「潮汐表 第1巻 日本及び付近」(書誌781号,ほぼ最後部に掲載)などを購入するか,図書館などで見る必要がある。この値の変動はほとんどないのである年のものを持っておればかなりの長期間に亘って使うことができる。
  さて, このコピーのリンクをここに掲載している。

  これから述べることは,筆者の調査研究に関わることであり,一般の読者にはあまり関心の無い部分も多いかと思われる。直接,潮汐計算をしたい場合,上記のものか,毎時刻潮位データで確認する場合には,最下部のものを直接参照してほしい。

  気象庁の観測結果が掲載されたウェブページを見てみよう。観測値である
ホーム > 各種データ・資料 > 海洋の健康診断表 > 潮汐・海面水位に関する診断表、データ > 潮汐観測資料 > 潮汐観測資料
http://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/tide/genbo/genbo.php

  筆者が今,関心を持っているのは沖永良部島和泊港なので,これに沿って以下,示す。表示地点として,名瀬と奄美とがある。
 名瀬(鹿児島県奄美市名瀬長浜町)の方は,過去筆者が利用してきたもので,海上保安庁管轄で,奄美(鹿児島県奄美市名瀬小湊)は気象庁のものである。上記サイトで潮位データを見ると,「名瀬は潮位表基準面の標高を決定するために必要なデータが得られていないため、潮位の標高表示を掲載していません」,とある。いずれにも,当然ながら,観測基準面表示があるが,名瀬には標高の選択肢がない。奄美は,新しく設置されたのかと思って調べてみたら,調和解析年次は2006年となっており,更新年次は名瀬のものと一致している。
  次のページには,観測値の調和定数などが示されている。
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/suisan/station.php
  このうち,利用者の観点から必要なものを次に。
観測場所 (北緯) (東経)  MSL 潮位表基準面 MSL標高 潮位表基準面の標高
名瀬   28゜24'  129゜30'  115         -    -
奄美   28゜19'  129゜32'  119        5.9   -113.1
筆者の利用目的からすると,いずれでも問題ないが,公開性の高さから,今後,奄美を使うことにする。

 奄美は,下記のサイトで見ると,
ホーム > 各種データ・資料 > 海洋の健康診断表 > 潮汐・海面水位に関する診断表、データ > 潮汐観測資料 > 2019年観測地点一覧表
https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/tide/genbo/station.php
観測地点名:奄美
所在地: 鹿児島県奄美市名瀬小湊
観測の方式: 電波式
基準面上の高さ(cm): 533.0
標高(cm):314.0
観測基準面の標高(cm): -219.0
とある。

  観測方式は,電波式であるが,その説明図を次に示す。井戸の上に設けられた送受波器から電波を水面に向け発射し、反射し戻ってくるまでの時間を計測することで潮位を観測する装置です。
ホーム > 知識・解説 > 潮汐・海面水位の知識 > 潮汐観測の仕組み
https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/tide/knowledge/tide/kansoku.html

  かつては,験潮井戸にフロートが設置されてその高度が記録されていたが,電波式への更新が進んでいる。この図から見て,観測基準面の意義が失われつつあるのではと感じている。


 観測基準面の標高は,次に示されている。

潮位表基準面について:
ホーム > 各種データ・資料 > 海洋の健康診断表 > 潮汐・海面水位に関する診断表、データ > 潮位表 > 潮位表 解説
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/suisan/explanation.html
  潮位表は、大潮の平均的な干潮面の高さを基準(海図の水深0mにほぼ相当)として、潮位の予測値(天文潮位)を掲載しています。「MSL-潮位表基準面」の欄は、大潮の潮位の片振幅に相当する、MSLの潮位表基準面からの高さです。「潮位表基準面の標高」の欄は、潮位表基準面の標高です。これは、「MSL-潮位表基準面」と、表に記載している「MSLの標高」をもとにして換算します(気象庁所管の観測地点のみ)。潮位表基準面と実際の潮位の観測基準面は異なりますので、潮位表と観測潮位をそのままの数値で比較するとずれが生じます。このため、両者を比較する際はそれぞれを標高基準上の値に変換するなどの方法を用いると便利です。標高への変換値は年ごとに更新していますので利用の際はご留意ください。
この欄の下に掲載されている図に,赤字で「奄美」の数値などを書き入れたものを次に示す。

 

  上図の矩形枠内の赤字で示した作業が必要となる。それを反映したエクセルのスプレッドシートを次に示す。
   この例は,2019年春に調査した沖永良部島の例である。

  計算例を次に示す。Apr. 09, 2019のものである。

 エクセルファイルを添付している。利用する場合は,沖永良部島和泊港の入力セルに直接,上書きするか,プレーンテキストをペーストして,使用ください。

以 上