アンケート questionnaire の問題性

 社会現象を捉える手法の一つに、アンケートという手法がある。アンケートの成功例として、たとえば選挙結果を予測するために新聞社などが電話で実施するものを挙げることができる。
 本教室の地理学実習調査では人文地理分野でこのアンケートという調査手法が多用されている。僕はこの手法にかなり以前より懐疑心を持っていたのであるが、2002年10月初めの地理学実習調査旅行の前に、三重県伊勢志摩半島以南の15市町村の総務課へ近々生じるであろう東海地震などの向けての「津波対策」についてアンケートを実施した。その文案(MS-Wordダウンロード)はこのサイトに示すが、分析結果についても公開する予定である(市町村名は明記しない)。いずれについても自然班4名の学生の間でかなり議論された。僕はなるべく介入しないようにしながらも、まとめるべく指導した。
 そのアンケート結果は、実地調査をすると実態を示していないことがわかった。アンケート紙を送付する前に、15市町村に電話し、了解を得ているし、文案もQ10を除けば回答する上で回答者が改めて調査する必要がほぼ無いものであった。しかし、実際とアンケートの結果にかなりの大きなズレが生じた。
 このような行政組織へのアンケートにあっても問題があり、個人のプライバシーに係わる質問では、なおさら正しい回答は得られない。回答者の属性情報、たとえば、年齢、収入、職業などを聞いても正しい回答が返ってくるかどうか疑問である。嗜好や日常的活動などは比較的正しい回答を得る可能性は高いであろうが、それにしても次に示す方法でそれを確かめる必要がある。
 心理的な内容を除けば、聞き取り項目の多くは、現場での観察や計測、統計資料などを使ってかなりの部分を把握することができる。この基本的な努力をしないで、アンケートだけに頼るのは、地理学徒とは言えないのではないか。
 アンケートの最大の問題点は、人が権威・支配に弱く、周辺に流される点にある。