関西大学千里山キャンパスには関西大学が移動してくる前の樹木が多少残っている。最も目立つ樹種はクスノキである。伐採をせずに葉を使う形の樟脳採取形態が,地域の人々による伐採の脅威から免れたのではないかと考える。
関西大学はこれまで学内の多くの大木を伐採してきたが,吹田市の保護樹の指定などが功を奏して残存させる方向を選ぶことを期待する。
環境庁の巨木の全国調査の基準は,http://yama-heiwa.moo.jp/sub%201-mt-kyojyu-tokunai-00.html,http://www2s.biglobe.ne.jp/~toyam/kiroku/buna/sokutei/sokutei.htmlなどに掲載されている。「1988年(昭和63年)環境庁による巨樹・巨木林調査を行うために制定では,巨木とは,地上から130cmの位置で幹周(幹の円周)が300cm以上の樹木をいう。地上から1.3mの位置で幹が複数に分かれている場合は、個々の幹の幹周を測定し、それらを合計するものとし、巨樹が斜面に生育している場合は、山側の地上から約1.3mの位置で測定する。地上130センチの位置において幹が複数に分かれている場合には、それぞれの幹周りの合計が300センチ以上あり、主幹の幹周りが200センチ以上のもの」とある。なお,植物生態学は採用されている胸高150cmに対して130cmとされているのは,日本人の体型を考慮したものであろう。
株立ちをした幹周の求め方について,吹田市のNPO「すいた市民環境会議」は,株立ちしている樹木の幹周については,それぞれの分岐幹の幹周を単純に合計するだけでは評価できないとして,断面積の合計値から幹周を計算する手法をよしとしました(参照『地球環境問題の基礎と社会活動』(古今書院2009年7月刊)の小田・喜田担当の第7章)(古今書院 環境 【ベストセラー&ロングセラー】 木庭元晴 というタームで検索するとヒットする)。参考に述べるが,国土交通省「土木工事共通仕様書」の場合は,各々の幹周の総和の70%をもって幹周としている。
さて,測定したのは,2本。関西大学博物館付近の吹田市保護樹第1号のクスノキと,尚文館そばの大階段脇の4本のエノキのうちの1本である。次の図は2回生北窪さんのスケッチである。
樹木の大きさを測定する場合,幹周,樹高,横の広がりなどがあり,今回は幹周と樹高を測定した。測定したクスとエノキはいずれも株立ちをしている。幹周計測の問題点を検証すべく,株立ちした各分岐幹の地上高150cmの幹周と,地上付近で幹が垂直に立って幹周が安定して分岐する前の幹周を計測した。その数値と計算過程を示したのが次の表である。
クスノキについて: 幹周でみると,分岐幹の合計値は,根本の2.7倍にもなっている。断面積でみると,分岐幹の合計値は,根本の0.8倍で比較的近い値となっている。
エノキについて: 幹周でみると,分岐幹の合計値は,根本の1.6倍にもなっている。断面積でみると,分岐幹の合計値は,根本の0.9倍で比較的近い値となっている。
以上の結果から,株立ちをする樹木については,幹周よりも断面積を使うのが適切かと思われる。さらに言えば,樹木の幹周は根部から幹部に変わる部分より30cmほど上の部分からは幹周は安定しており,胸高130cmや150cmに拘る必要はない。株立ちをしている場合は,根部と幹部の境界と株立ち開始の位置との間付近で幹周を計測した方がいいのではと考える。
以 上