Google Earth または Google Mapの上で,ポリゴンなどを作成してkml出力し,それをGrassGISに取り込んで,何らかの作業をするという流れを次のページ
☆ Google Earth上でパスなどの作成を実施し,その結果をkml出力して,それをvector化し,GrassGISの世界経緯度座標系に取り込む
で考えたのであるが, その過程で問題が出てきた。その理由を追及したのがこのページである。GEとGMは位置情報をWGS84の経緯度座標系で管理しつつ, 表示は擬似メルカトール投影図(擬似というのは地球形をWGS84楕円体とせず表示速度の高速化のために真球としている)を使用していることがわかった。距離や面積などの計算もこの地球系を真球として計算している。というわけで,赤道に接する円筒に投影されているので, メルカトール図法特有の高緯度で横幅がどんどん拡大して行く特徴を持つ。
前述のページで示すように, GEやGMから出力したkmlファイルは経緯度情報からなるので,そのままGrassGISの世界経緯度座標系に取り込んで表示すると,正距円筒図法で表示されるので,東西方向に拡大してしまい, 日本のような中緯度であっても,日常的感覚と違和感が生じて,使えないことがわかった。
I.1 GIS座標系の成り立ちを理解する
GISは,地球表面の事物(これを地物 featuresと称する)を平面に投影して分析する技術である。地球の形のモデルは現在でも幾つかあり,ある一つが採用され,その地球形を使って,平面や曲面に投影し,曲面の場合にはそれを平面に展開している。前者を地理座標系 Geographic Coordinates Systemといい,後者を投影座標系 Projected Coordinate Systemという。何故,geodeticでなくて,geographicなのか。実際に地球曲面上で測地したものでなくて,回転楕円形モデルに機械的(幾何学的)に当てはめたものだからである。 後者の地図投影法は多々あって,目的に応じて使い分けられている。GISで使うのは,通常,狭い範囲のもので,UTM座標系と円錐座標系と平面直角座標系である。日本では,海上保安庁の海底地形図などでは(ランベルト正角)円錐座標系が,国土地理院の地形図を中心とする大縮尺図ではUTM座標系と平面直角座標系が使われている。
I.2 地理座標系
地理座標系 Geographic Coordinates Systemは,地球形を回転楕円体spheroidに近似して設定されている。日本では,2002年からTokyo datum(ベッセル楕円体)からJGD2000(世界測地系WGS84)に変更された。人工衛星による測量で地球形をより知ることができ,米軍によるGPS人工衛星の利用が普及したことに拠っている。
楕円体の方程式は,x^2/a^2 + y^2/b^2 + z^2/c^2 = 1で,あり,下記のa, bは地球の長軸である赤道半径と短軸である極半径の長さを表している。
扁平率は次の式で計算される。 f = (a-b)/a = 1 - b/a
ベッセル楕円体 Bessel ellipsoid 1841
a = 6,377,397.155 m
ƒ = 1 / 299.1528153513233 (0.003 342 773 154 ± 0.000005)
b = 6,356,078.963 m.
日本測地系
a = 6,377,397.155 m(同上)
ƒ = 1/299.152813(0.003 342 777 32)
b = 6,356,078.963 m(同上)
世界測地系WGS84 ( a および ƒ によって定義される)
a = 6,378,137.0 m
ƒ = 1 / 298.257223563 (0.003 352 810 7)
b = 6,356,752.30 m
I.3 特にGRS80楕円体について ー国土地理院のサイトからー
http://www.gsi.go.jp/LAW/G2000-g2000faq-1.htm#qa1-11
「GRS80(Geodetic Reference System 1980:測地基準系1980)は現在,地球を最もよく近似している楕円体として広く用いられています。世界測地系が採用しているGRS80楕円体の定数は,1979年のIAG(国際測地学協会)及びIUGG(国際測地学及び地球物理学連合)総会において採択されたものです」。
「ITRF(International Terrestrial Reference Frame(国際地球基準座標系)94は,GRS80楕円体と整合するように定義された3次元直交座標系をいい,地球の重心に原点を置き,X軸をグリニッジ子午線と赤道との交点の方向に,Y軸を東経90度の方向に,Z軸を北極の方向にとって空間上の位置をX,Y,Zの数字の組で表現します」。「改正された測量法では,この位置の表示に地心直交座標を用いることができることが新たに規定されました」。
「World Geodetic System(世界測地系)1984の略語です。WGS84は,米国が構築・維持している世界測地系で,もともと軍事用で開発されました。GPSの軌道情報で使われているほか,GPSによるナビゲ−ションの位置表示の基準として使われています。 WGS84は,これまでに数回の改定を行っていますが,その都度ITRF系に接近し,現在ほとんど同一のものといえます」。
II.1 GEおよびGMで使用されている経緯度座標系
いずれもUSAの企業であるGoogleが開発したものであるから,WGS84が使用されている筈であるが,実用上,見事な工夫がなされている。次の文章に網羅されている感がある。
http://www.maptiler.org/google-maps-coordinates-tile-bounds-projection/
————————Spherical Mercator EPSG:900913 (EPSG:3857) and WGS84 Datum————————
(引用1)The coordinates you use in the Google Maps API and which are presented to the users is Latitude/Longitude in WGS84 Datum (when directly projected by Platte Carre then it is referenced as EPSG:4326).
この一文を易しく確認すると次のようになる。GMやGEの座標系はWGS84測地系の経緯度座標系が採用されている。特に標準緯線を赤道とするPlatte Carre(フランス語 英語ではflat square)によって直接投影されるときは,EPSG:4326に当たり,経緯度の数値のまま投影される。つまり,度単位による値が同じ場合,経線間隔も緯線間隔も地図上で等距離を占めることになる。経線の間隔は実際には高緯度になるほど狭くなるのだから,経線間隔が高緯度ほど(横方向に)拡大してしまう。横方向の拡大率は、赤道を1とすると、緯度φで1/cosφとなっている。
この図法は正距円筒図法Equirectangular projectionという。この図法は,実際には円筒に投影されないので適当な日本語訳ではない。正距長方形図法と訳した方が適切である。なお,緯線と経線が直角かつ等間隔に交差するので方眼図法または正方形図法とも呼ばれるが,方眼図法はいい表現だと思う。
https://en.wikipedia.org/wiki/Equirectangular_projection
II.2 GEおよびGMで使用されている擬似メルカトール図法
上記サイトの引用1に続くのが次の文である。
(引用2)But for map publishing in the form compatible with all the popular interactive maps and especially for ground tile overlays you need to use Mercator map projection. Interactive web maps are using "Spherical Mercator" system which uses Mercator projection on the sphere instead of WGS84 ellipsoid. It is defined as EPSG:900913 or EPSG:3857 (deprecated EPSG:3785). Details about this system are part of Virtual Earth documentation as well as OpenLayers documentation. Exact numeric definition for GIS systems (in formats like WKT or Proj4), is available in the SpatialReference.org on-line database.
最初の文は次のようになる。一般に利用されている対話型地図に耐えうる形での地図出版や特にground tile overlaysのためには,メルカトール投影法を使う必要性がある。このままでは意味が分からないだろう。次のサイトが参考になる。要するにGEやGMの全球表示(赤道上での解像度157km/pixel)から最大拡大表示(赤道上での9.3mm/pixel)までのズームを急速に表示できる技術の実現にはメルカトール投影法が必要と言っている。
http://www.opengis.co.jp/techguidej/76googleMapsStruc_J.pdf
対話型ウェブ地図は,WGS84楕円体ではなく地球を球体として扱うメルカトール座標系が使われているのである。これがEPSG:3857に当たる。
http://spatialreference.org/ref/sr-org/7483/
で見ると,
EPSG:3857 -- WGS84 Web Mercator (Auxiliary Sphere)
Projection used in many popular web mapping applications (Google/Bing/OpenStreetMap/etc). Sometimes known as EPSG:900913.
とあり,この中のProj4を見ると,
+proj=merc +lon_0=0 +k=1 +x_0=0 +y_0=0 +a=6378137 +b=6378137 +towgs84=0,0,0,0,0,0,0 +units=m +no_defs
のようになっており,測地系が真球体になっている。
II.3 EPSG:4326とEPSG:3857の比較
次のサイトには,両投影法の違いが目に見える形で示されている。
Mercator vs. well…not Mercator (Platte Carre)
Platte Carre and Mercator
https://idvux.wordpress.com/2007/06/06/mercator-vs-well-not-mercator-platte-carre/
上記サイトを見ると,タイルを自ら作成する必要がないユーザーには世界地図でメルカトール図法が極めてすぐれていることが理解できる。
このEPSG: 3395の情報を次に示す。
EPSG:3395 Projected coordinate system WGS 84 / World Mercator
https://epsg.io/3395
PROJ.4: +proj=merc +lon_0=0 +k=1 +x_0=0 +y_0=0 +datum=WGS84 +units=m +no_defs
この座標系は次のものである。
EPSG:4400 Cartesian coordinate system Cartesian 2D CS. Axes: easting, northing (E,N). Orientations: east, north. UoM: m.
https://epsg.io/4400-cs
この座標系には, 関西を完全にカバーするJGD2011なども入る。
EPSG:6690 Projected coordinate system JGD2011 / UTM zone 53N
https://epsg.io/6690
PROJ.4: +proj=utm +zone=53 +ellps=GRS80 +units=m +no_defs
————————————————
GEとGMで使用されている投影座標系の情報を改めて,次のページで確認してほしい。
EPSG:3857
Projected coordinate system
WGS 84 / Pseudo-Mercator -- Spherical Mercator, Google Maps, OpenStreetMap, Bing, ArcGIS, ESRI
https://epsg.io/3857
PROJ.4: +proj=merc +a=6378137 +b=6378137 +lat_ts=0.0 +lon_0=0.0 +x_0=0.0 +y_0=0 +k=1.0 +units=m +nadgrids=@null +wktext +no_defs
EPSG:4326
Geodetic coordinate system
WGS 84 -- WGS84 - World Geodetic System 1984, used in GPS
https://epsg.io/4326
PROJ.4: +proj=longlat +datum=WGS84 +no_defs
これまで引用してきたこのサイトepsg.ioでは世界地図を各種座標系でライブに変換して表示することができるのだなあ。ギットハブGitHub, Inc.恐るべし。
https://epsg.io
以 上