世界測地系と日本測地系2000

測量法改正 主に田中を参考

 「測量法及び水路業法の一部を改正する法律」は,2001年6月20日にが交付され,2002年4月1日より施行された。これによって,日本測地系から世界測地系に移行することになった。この変更は,「1980年代からGPSやVLBI(超長基線電波干渉計 Very Long Baseline Interferometry)などの技術が実用化され,測量の精度が向上するとともに世界で共通に使用できる基準が構築された。この基準は,世界測地系と呼ばれ,船舶や航空機の測位に用いられるGPSはこの基準に基づいて経緯度を測定している」(田中,2002)。地球の形,重心,さらに地球の宇宙での位置が精度高く計測できるようになり,船舶や航空機の測位にGPSが日常的に用いられるようになって,日本だけの局所座標をこれ以上使うことができなくなったのである。

地球重心座標系または三次元直交座標系 主に飛田を参考

 存在するであろう地球の重心を中心とする三次元直交座標系を世界座標系という。このうち,著名なものは次の二つで,日本が正式に採用しているのは,世界の複数の国の協力で進められている地球の宇宙観測による計測が土台になっているITRF (International Terrestrial Reference Frame)系である。地形図や測地の観点からするとITRFが必要となっている。USA一国が使用するWGS (World Geodetic System)-84が他の一つである。GPSはUSA所有の人工衛星を使うことで成立しており,GPSを利用するにはWGS-84が必要となる。
 このように考えていたが,飛田は「GPSだからWGS-84」という図式はもはや成り立たないという。その理由を幾つか述べている。船舶や航空機の測位に用いられており,国際的に取り決められている座標系がWGS-84であるにも関わらずである。理由の中でITRF系だけを使ってもいいと感じられるのは,現在のWGS-84は密かにITRF 系を採用しており,「GPSの広報暦も精密暦も(WGS-84という名前の)ITRF 系になった」らしい。
 三次元直交座標系は,重心(原点,Origin)から地軸の北極方向をZ軸,本初子午線と赤道が交わる点の方向をX軸,東経90度の子午線と赤道の交わる点の方向をY軸としている(下の図参照)。
 地表の点はこの(X, Y, Z)で表現することができるが,例えば地表の2点間の距離を定義するなどのことは困難となる。そこで,地球に類する回転楕円体を想定することになる。
 慣習上,または取り決めなどで,ITRF系では,GRS80楕円体を,WGS84系では,WGS-84楕円体を使う。座標系は,位置と方向を決め,楕円体は,緯度Bと楕円体高Heを決定するためのものである。なお,地理座標(B, L, He),つまり(緯度,経度,楕円体高)は,座標系とは考えない(飛田,2002)。なお,緯度を標記するアルファベットをここではLatitudeではなく,Bとしている理由は,この文末に示す。
 飛田の下の図を見るまで筆者は,平面直角座標系(X, Y, H)と三次元直交座標系(X, Y, Z)で,両者に共通に使用されている(X,Y)に何らかの関係があるのではと感じていた。飛田によれば,全く関係がないらしい。下の図から歴然としている。なお,(X, Y, H)のHは標高である。
 なお,ここでのXとYの関係について,角度の回転方向については,ガウス直交座標とは異なる。つまりXからYに回転する角度をプラスとしている。平面直角座標系でいえば,真北から東方向に回転する場合,プラスとなる。

飛田(2002, p. 25)による

日本測地系2000 測地成果2000

日本が採用したITRF座標系とGRS80楕円体は,日本測地系2000と呼ぶ。それに基づいて作成された25000分の1地図などの成果は,測地成果2000と呼ばれる。英語表現では,旧はTokyo Datumで,新はJapanese Geodetic Datum 2000である。
変換プログラムは国土地理院のweb siteに掲載されている。

かわる国土地理院の地図 高橋を参考文献

 従来の日本測地系による緯度経度の表示から世界測地系に換えるための情報は「世界測地系緯度・経度対照表」(関連リンク集参照)に出ている。
 2万5千分の1地図を例に取ると,当面図郭の変更は行わず,旧測地系による図郭4隅の経緯度などの情報は削除せず,世界測地系を併記する形をとる。
 2万5千分の1地形図は平成14年度からベクトルデータでの地形図管理になり,図郭を意識しない,つまりシームレスになる。紙地図の刊行は6年かけて全地形図をきりのいい値にする図郭に変更する予定。基本図郭は現在と同じ緯度5分,経度7.5分とし,隣接図とオーバーラップするようにして,それぞれの図郭を大きくする。これによって,世界測地系図郭が旧来の日本測地系図郭を完全に含む形とする。
 旧来の数値地図の世界測地系への対応ソフトが国土地理院のウェブサイトで提供される。
関連リンク集参照

文 献

田中宏明, 2002. 測量法の改正. 地図(資料),Vol. 40, No. 4, pp. 11-23.
飛田幹男, 2002. 世界測地系と座標変換. 日本測量協会, 174p. 1524円
高橋哲男, 2002. かわる国土地理院の地図(測量法改正の話 第3回). 地図ニュース, No. 350 (2001.11), pp. 7-10.

緯度をBで標記する理由: 2012.9.24追加

 緯度には4種類あるここに富山高専航海科学研究室の河合雅司先生のサイトの一部を転載させていただく。

地理緯度(Geographical Latitude,lA)
測地緯度とも言い,地図等で使用されている緯度である。
地球楕円体上のある地点において地球楕円体に接する平面の法線と
地球赤道面のなす角。

地心緯度(Geocentric Latitude,lB)
地球楕円体上のある地点と地球楕円体の中心とを結ぶ直線が
地球赤道面となす角。

 tan(lB)=B2/A2・tan(lA)

天文緯度(Astronomical Latitude,lC)
地球楕円体上のある地点における鉛直線(ジオイド面の法線)と
地球赤道面とのなす角。

化成緯度(Reduced Latitude,lD)
地球楕円体上のある地点を通る赤道面の法線と地球楕円体と
赤道で接する球面との交点を考える。その交点と地球楕円体中心
とを結ぶ直線が赤道面となす角が化成緯度。

 tan(lD)=B/A・tan(lA)

 

 GISで使うのは,Latitude Bということになる。